子育ての経験が仕事に活きる……復職して感じることって?
- 育児・子育て
仕事をするにあたって、子育て期間はブランクだと思っていませんか? 育児休業中の方などは「業務についていけなくなるのでは……」と焦りを覚えてしまうこともあるかもしれません。でも、実は子育て経験は仕事にも活きる多くのスキルを磨いているもの。子育てを通して身につけられる仕事に活きるスキルについて、復職したワーキングマザーが感じているポイントをご紹介します。
子育て期間はブランクではない?!
「育児」と「仕事」は対のようにとらえてしまいがちなものです。そのため、産休・育休や、育児に専念している時期をブランクと引け目を感じてしまっている方も多いのではないでしょうか。
でも、実は子育て期間の様々な経験は、仕事にも活きる多くのスキルを磨くことに繋がっています。「そんなこと言われても、実感ない……」と思われるかたは、子育て期間中に自分が行っていることを考えてみてください。思い通りにならない子どもを育てることに加え、膨大な家事、子どもの行事の準備、実家やママ友とのコミュニケーション、係活動、地域の活動……と、気が遠くなるほど数多くのタスクを同時並行でこなしていることに気付くのではないでしょうか。
このような忙しいマルチタスクな日々から、多様なビジネルスキルが磨かれていることは、復職したワーキングマザーの多くが実感しているものです。それらは大きく次の4分野に分けられます。「業務遂行力」「大人スキル」「リーダーシップ」「内面」それぞれの分野でどのようなスキルが養成されているのか見ていきましょう。
マルチタスクの子育てで磨かれる業務遂行力
オムツ替えに離乳食作り、洗濯に大人の食事の準備、はたまた初節句の準備から保育園のリサーチまで……子育て期間は、大きなことから小さなことまでto doの嵐ですよね。それは、スーパーマルチタスクとも言える状況。そんな溢れかえる「やらなければならないこと」をモレなくこなしていくことで、仕事でも求められるマルチタスクの業務遂行力が身についていきます。
復職者が感じる子育てを通じて身につけた「マルチタスクの業務遂行を可能にするスキル」は次の3つです。
・優先順位づけをする力
子育て中の日々溢れかえるタスクにヌケモレなく対応していくには、「何からすべきか」という優先順位づけが欠かせません。優先順位をつけることで、どうタスクを段取っていくかが見えてきます。
・段取り力
優先順位に基づいて、何をどう処理していくかという段取りをすることは、業務設計力につながります。子育て中にはつきものの突発的な予期せぬ事態に臨機応変に対応する経験も、トラブルシューティングスキルにつながるでしょう。
・不要なことはやらないと判断する決断力
育児も家事も次から次へとやるべきことが生まれてくるもの。とはいえ、時間が限られる中で全てに丁寧に対応していくのは無理なことも。そのため、時には「捨てる判断」も必要に。「今日は保育園の見学があるから、離乳食作りはなし! ベビーフードで代用!」というように、やるやらないを決める判断も多く経験しているはずです。これが仕事をするうえでも、不要なことに時間を無駄にしないための判断力・決断力につながります。
実際、ワーキングマザーのマルチタスク能力の高さは、多くの職場でも認められているものです。怒涛の子育ての日々で磨かれたスキルは、筋金入りの骨太なスキルになると言えるでしょう。
多様な人と関わる中で伸びる対人スキル
なんだかんだいって似通った人たちが集まりがちな職場。その一方で、子育てを通じては、年齢も経験もバックグラウンドも多種多様な人たちと出会います。異なる価値観を持つ人たちとの付き合いともなるため、職場でなら通じる「阿吽の呼吸」のようなものも発生しづらいもの。でも、だからこそ柔軟な対人スキルが磨かれていくのです。具体的にどのようなスキルが身についていくのか見ていきましょう。
・多様性への理解や広い視野
年齢や経済状況、家庭の状況、仕事の有無、受けてきた教育など、子育て中に出会う人は千差万別。さまざまな価値観に触れることは、驚きもありつつ、多様性への理解を深めることにつながります。また、自分の価値観に固執するのではない広い視野を得られるはず。これらは、昨今の職場で重視されるダイバーシティへの理解につながるでしょう。
・コミュニケーション力
自分とは異なる価値観を持つ相手の考えを理解すること。自分の考えを伝えること。気持ちよくやり取りをすること。子育てを通じて出会う様々な価値観を持つ人たちと意思疎通するために磨いたコミュニケーション力は、職場復帰後にも若手社員など異なる属性のメンバーとの円滑な業務遂行に役立つでしょう。
・交渉力
保護者同士の役割分担や、保育園などでの係活動、はたまた夫や両親との子育てタスクの役割分担など、子育て中は交渉力を発揮しなければならないシーンも多いもの。仕事で交渉や折衝が必要な場面でもその経験は生きてくるでしょう。
子育てで磨かれる対人スキルは、1対1の場面だけで発揮されるものではありません。チームワークが求められる場面でも生きてくるでしょう。
育児のPDCAで養われるリーダーシップ
育児とリーダーの仕事はよく似ていると言われています。あまりピンとこないかたもいらっしゃるかもしれませんが、「夫や家族と協働して育児・家事を計画したり実践する」ととらえると、リーダーの仕事との繋がりがイメージしやすいかもしれません。子育てがいかにリーダシップの養成に役立っているのか見ていきましょう。
PDCAをまわす力
子育てと家事のマネジメントには「Plan」「Do」「Check」「Action」のPDCAサイクルを高速にまわすことが求められます。
「Plan」として長期的な計画から日々のタスクの計画の両方を描き、夫や両親・義実家なども含めた役割分担を設計。「土曜日は私が子どもの予防接種に連れていくから、その間に洗濯をお願い!」など依頼や指示もおこないます。
「Do」では、実際の家事・育児タスクの実行に加え、「少し子どもが風邪気味かもしれない。ちょっと注意していこう」といった情報共有も欠かせません。
「Check」では、進捗確認を実施。「少し風邪気味のためか、大事をとったほうがいいかも。明日のお出かけはリスケしたほうが良さそう」といった具合に、予期せぬ事態が起こりがちな子育て期間では頻繁に行われるものです。
「Check」した内容を踏まえての「Action」、つまり改善案作成も子育てで磨かれます。「体調不良で明日のお出かけをリスケするから、来週土曜か日曜の予約の空き状況を確認したうえで調整!」など代替案を策定し、関連する人たちに周知。まさにリーダーの仕事といえるでしょう。
連携、協働の力
子育ては、関係する人たちも多いもの。夫や実家、義実家はもちろん、保育園や幼稚園、ママ友・パパ友など、多岐にわたります。それらの関係者とスムーズなコミュニケーションで情報共有、連携をはかっていくのも、リーダーの仕事に通じるものです。
このようにリーダーシップは、子育てを通じて思った以上に磨く機会があるもの。だからこそ、最近ではワーママが管理職やリーダー職につくことも増えているのかもしれません。
思い通りにならないこそ磨かれる内面
子育ては、本当思い通りにならないことが多いもの。一生懸命作った離乳食を一瞬でひっくり返されたり、喜んでくれると思ったオモチャに見向きもしなかったり、寝つきをよくするために日中公園に連れて行ったのに夜も目がギンギンのままだったり……。「こうすればこうなるはず」という論理がことごとく通じなくて、徒労感を覚えてしまうこともあるものです。
でも、合理的に物事が進まない状況の中でも、愛すべき存在に全力で寄り添っていくからこそ、内面の広さ・深さ・丸さが増していくようにも感じられますよね。次のような力が身についたことを実感することも多いのではないでしょうか。
忍耐力
たとえばスプーンの使い方やひらがななど、子どもの「できるようになる」を辛抱強く待ったり、イヤイヤ期で思い通りにならない状況に時にイライラしつつも寄り添ったり……。徒労感を覚えてしまう事態に陥ることに事欠かない子育て期間。自ずと待つ力、忍耐力が磨かれていきます。
寛容性
子どもは予測もつかないことをするもの。さらには、子どもに何かを伝えようにも小さいうちは言葉で説得することもできません。言葉もまだ十分に通じない子どもと日々を過ごす中で、理屈でなく「そういうこともあるよね」と思える寛容さが身についていくといえます。
柔軟性
思いも寄らない子どもの行動に付き合ったり、子育てを通じで様々な年齢や価値観の人に出会ったり、全く計画通りにいかない状況になんとか対応したり……子育ての日々は1分1秒たりとも予測がつかない毎日。でもだからこそ、小さなことに過剰反応しすぎず、おおらかに、臨機応変に対応できる柔軟性が身に付くものです。現在は、変化のスピードが速く、必ずしも連続的に物事が進むわけではない時代。その中でサバイブしていくには、機転と柔軟性が欠かせません。子育てを通じて、柔軟性を身につけていっていることは、仕事をするに当たっての大きなアドバンテージとなるはずです。
実際、復職してから自分の内面やマインドの変化を感じるワーママも多いようです。今までなら若い社員と意思疎通がはかれず、イライラ、カリカリしていたことも、大らかにとらえられるようになったなんてことも。子育てを通じて、人間的な幅が広がっていくといえるのではないでしょうか。
まとめ & 実践 TIPS
子育てはブランクと感じてしまいがちですが、そんなことはありません。日々のタスクに溢れ、思い通りにならない毎日をなんとかやりくりしていくことが、仕事にも通じるスキルになります。「育児中だから……」と引け目を感じず、自信を持っていきたいですね。育児と仕事を対立するものではなく、シナジーを生むものとして前向きにとらえていきましょう。
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