小学校入学前の保護者の不安 子どもが学校を好きになるためには? 「上の子には本当に申し訳なかった」という後悔から学んだこと [やる気を引き出すコーチング]

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先日、中学1年生、小学2年生のお子さんを持つKさんからとても興味深いお話をお聴きしました。「上の子には本当に申しわけなかったなと今でも思っているんです。もう少し私の言葉かけを工夫してあげられたら、もっと学校を好きになれたのかなと。その点、下の子は今、本当に楽しそうに学校に行っています。親がどんな言葉をかけるのかって本当に大事ですね」。

励ますつもりの「脅し」の言葉

「上の子が小学校に入る前は、私も初めてのことで、学校生活にうまくなじめるかどうかとても心配でした。
動作が遅いほうなので、こんな調子で皆についていけるのかなと心配になってしまうんです。入学までにもう少しがんばって慣れておいてほしいなと思って、『これくらいはもう自分でできないと小学生にはなれないよ』、『こんなに時間かけてやっていたら、小学校に入ってからは大変だよ』というような言葉をかけていました。

私としては励ますつもりだったんですけど、子どもにとってはプレッシャーだったんじゃないでしょうか。
今、思うと、励ますというよりは、完全に『脅し』だったなと思います。ことあるごとに、『小学校に入ったら勉強が大変だよ』、『幼稚園より先生も厳しいよ』とも言っていました。良かれと思って、本人にも自覚を持ってほしいという気持ちだったんです。

結局、それが上の子をかなり萎縮させてしまいました。ちょっとしたことで、『小学校は大変』と言って落ち込んでいました。

コーチングを学んで、私がやっていたことは、やる気を引き出すのとは真逆のやり方だったんだと知りました。これまでの言葉かけを変えるようにしました。なので、下の子の時はまったく違いました」

プラスの暗示でワクワク感を!

「暗示のスキルっていうのがあるじゃないですか。それを子どもたちにどんどん言うようにしました。
特に、下の子が小学校に入る前は、『小学校は楽しいよ!こんなこともできるようになるよ!勉強は楽しいよ!もうすぐだね!楽しみだね!』といった言葉をかけました。
まだ素直な時期だったこともあって、下の子は、『小学校は楽しいところなんだ!』と心から思って入学したようです。

正直、『こんな状態で大丈夫かな』と思うこともあったんですけど、そこは『小学生になったら、きっともっと早くできるようになるよ』と、これもプラスの暗示の言葉で励ますようにしました。
性格の違いもあるかもしれませんが、上の子の小学校生活と下の子の今の様子を比べると、明らかに、下の子のほうが楽しそうに学校に通っています。

下の子にとっては、『小学校は楽しいもの』、『勉強は楽しいもの』が前提になっているんですね。親がかけている言葉が、子どもの前提を作ってしまうんだなって、恐ろしいなと思いました。

ついつい、今でも、できない前提、難しい前提で子どもを見て、声をかけてしまうことがあり反省します。『自分でできる?大丈夫?』とか、『そんなことまでできるなんてびっくりした!』とか、つい言ってしまいます。

『あなたにはできるわけないよね』っていう気持ちがあるから、そういう言い方になってしまうんですよね。それで、慌てて言い直しています。『あなたらきっとできるよ』、『ほら、やっぱりできた!できると思ってたよ』と。
そのほうが、子どもはワクワクしてきます。上の子にも今、一生懸命、プラスの暗示の言葉をかけています。中学校生活はもっと楽しんでもらえたらと思っています」。

まとめ & 実践 TIPS

このような事例をうかがうと、「子どもは接したようになっていく」、「子どもは扱われるようにしかならない」という言葉を思い出します。「あなたはできるよ!」、「あなたの未来は明るいよ!」と信頼する気持ちがあれば、自ずとそれにふさわしい言葉が出てきます。そんな言葉をかけられた子どもは、どんどんその気になっていきます。
子どもは何者になるのか本当にわかりません。今、見えている現実だけで、決めつけてはいけないと感じます。新しいステージへ進むことによって、できなかったことがこれからどんどんできるようにもなっていきます。保護者の皆様も、心配するより「楽しみだな!」という気持ちのほうを大切に、どうぞ、お互いにワクワクする気持ちで小学校入学の日を迎えていただけたらと思います。

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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