「勉強させる」から子どもは勉強しようとしなくなる?[やる気を引き出すコーチング]

このコラムの連載を書かせていただくようになって、早11年目を迎えました。長きに渡り、おつきあいいただいていることに、心から感謝いたします。
この10年ほどで、以前は、それほど気にならなかったことが、年々、気になるようになってきました。例えば、このようなご質問をいただく際に感じることです。

「子どもに勉強させるには、どんなコーチングが効果的なのでしょうか?」
「子どもを机に向かわせるには、どんな言葉をかけたらよいでしょうか?」
これらの言葉に、非常に違和感を覚えるようになりました。大人がこういう言葉を使っているから、子どもは自ら勉強しようとしないのではないかと思うようになったのです。

■「強制」から「信頼」へ

「子どもに勉強させる」
「子どもを机に向かわせる」
これらの言葉の根底には、大人が子どもを自分の思い通りにコントロールしようとする意図がにじんでいます。
この時点でもうコーチングとは言えません。自分の思い通りにコントロールしようとする人の言うことは、かえって素直に聞けないものです。「〜させよう」とこちらが思えば思うほど、子どもは抵抗したくなります。

子どもは、本当にやりたいと思ったことは、言われなくても勝手にやります。必要だと自分で思えたら、自ら勉強します。勉強が嫌いだった子どもが、目標や意義を見出せた途端に勉強するようになったとか、おもしろさを実感したことで勉強が好きになったなどの事例に、この10年間で数え切れないほど出会いました。その過程で、かつて、私自身も「上手に宿題に取り組ませるには」といった表現を平気で見出しに使っていたことを恥じ入るようになりました。

子どもはもともと「自ら学ぶ」存在です。「〜させる」という強制のスタンスから、「子どもは自分でする」という信頼のスタンスにこちらが変化した時に、子どもは自ずとそのような存在へとシフトしていくのだと感じます。「〜させる」と「子どもが〜するよう関わる」は些細な違いのようですが、「勉強させよう」と思ってかける言葉と、「この子は自分で勉強する子だ」と思ってかける言葉とでは、子どもへの伝わり方は明らかに違います。その違いを察知する子どもの感度は非常に高いです。
子どもの身体だけを思い通りに動かそうとすることよりも、子どもの心が動くことの方がよほど効果的です。そのために必要なのが子どもへの信頼なのです。

■「矯正」から「尊重」へ

先日、小学校5年生の息子さんにおもしろい変化があったと、コーチング講座生のAさんが報告してくれました。

「とにかく、ゲームばっかりしていたんです。学校から帰ると、宿題もせず、いきなりゲームです。宿題をやらせようとしても、まったく聞きませんでした。『やってもいいから宿題をやってからやりなさい』と何度言ってもダメでした。
この前、何がそんなにおもしろいんだろうと思って、子どもに教えてもらって、私もちょっとやってみたんです。これが思っていた以上におもしろくて、『これ!本当におもしろいね!ハマるのわかるわ〜!』と思わず言ってしまったんです。子どももすごく嬉しそうにしていました。
そうしたら、その日は『そろそろ宿題やろうかな』って、自分からゲームをやめたんです。もうびっくりしました!やめさせようとしても、まったく聞かなかったのに!こんなことってあるんですね!
そこで『ゲームをやめて宿題しなさい』と言うのはやめることにしました。まあ、相変わらず、ゲームはやっていますけど、『おもしろい』という気持ちを尊重すると、以前よりゲームの時間が減ったように感じています」

本当におもしろいですね!行動を矯正されるより、気持ちを受けとめ、尊重してもらえると、ストレスが減ります。そして、自分で考えられる余裕が生まれます。
「勉強させる」という表現を脇に置いて、もう少し子どもの自発性を信じてみませんか。

プロフィール

石川尚子

石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。近著『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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