子どもの「やる気」の源泉は「愛されている」という実感[やる気を引き出すコーチング]

教育現場にコーチングが採り入れられ、「子どもの幸福度が高い国」と言われるオランダの教育について、私は、数年前から、高い関心を持って研究しています。
ユニークな教育制度もさることながら、オランダに滞在していて非常に印象的なことは、「大人が子どもに対して声を荒げない」という点です。

日本で、学校の講演会などに招かれると、まず、大勢の生徒を静かにさせるために、先生が声を張り上げます。「はい!静かに!姿勢を正して前を向きなさい」。街中で、駆け回っている子どもに対して、「走らないで!大声出さないで!」と感情的に禁止の言葉をかける大人をよく見かけます。オランダでは、そのような場面にまず遭遇しません。

隣に座って対話をするオランダの親子

先日も、私のコーチ仲間がオランダから帰国し、とても興味深い話をしてくれました。
「公園やレストランで、親子を観察していて思ったんだけど、どの親子も並んで座って、ずーっと対話をしているんだよね。何を話しているのかはわからないけれど、大人が穏やかに話しかけて、子どもの話にも耳を傾けている。スマホを見ている大人がいないんだよ。ずっとそばにいて、子どもの頭をなでたり、肩を抱いたり、スキンシップもよくとっているし、時々、子どもがぐずったりすることもあるんだけど、決して声を荒げず、話を聴こうとする。あんなふうに、いつも隣で対話をしてもらえたら、『自分は愛されている』っていうことが子どもには伝わっているんだろうなって思う」。

そういえば、日本では、時々、気になる光景に出合います。公園で、子どもを遊ばせているかたわらで、大人がずっとスマホを見ている光景です。子どもが大きな声で話しかけますが、親の方は「うるさい!静かにして!」と取り合いません。ますます、子どもは奇声を発したり、危なっかしい行動をとったりします。子どもは、ああやって、親の気を引こうとしているのだなと思うことがあります。

隣にいて、「一緒にいるよ」、「いつも見てるよ」という想いが伝わるだけで、子どもは安心感を覚えます。何を話すか以上に、心身ともに一緒にいる時間が大切なのです。心から「愛されている、大切にされている」と子どもが実感できることで、こちらが声を荒げる必要もなくなるのではないかと思います。

「存在承認」の効果

お子さんが生まれた瞬間のことを思い出していただくと、ただ、そこに、お子さんが存在しているだけで、幸せな気分になったのではないでしょうか。顔をのぞきこんでは、微笑みかけ、声をかけます。子どもが何をしたわけでもないけれど、その存在そのものを肯定的に認め、関わります。これを「存在承認」と言います。

成長するにつれて、何か良い結果を出した時しか、認めなくなっていきます。例えば、テストで良い点をとった、志望校に合格したなどの場面では、「よくがんばったね」、「えらいね」と言葉をかけます。これを「結果承認」と言います。

もちろん、「結果承認」も非常に効果的です。でも、「結果承認」だけでは、何かを成し遂げなければ、自分には価値がないと子どもは思うようになってしまいます。親が喜ぶ良い結果を出さなければ、自分は愛されないと思うようになってしまいます。この危機感からは、「幸福感」や「やる気」はなかなか芽生えません。

オランダの大人たちは、この「存在承認」がとても自然で上手いなと感じます。スキンシップも「存在承認」の一つです。また、「今日も元気で行ってらっしゃい!」、「一緒に○○しよう!」、「これ、おもしろいね」など、頻繁に声かけをしています。このような「存在承認」によって、「愛されている、大切にされている」と子どもは実感できます。それはこの上ない安心感であり、「やる気」の源泉となっていくのです。

(筆者:石川尚子)

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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