2014/06/06

[第2回] ICTを活用している教員/未活用の教員 [3/3]

ICT活用の不安と課題

 ICT活用の必要性が感じられているにもかかわらず、現状で「低活用」「中活用」の教員が多いのはなぜか。図6は、活用区分別に、ICTを授業で活用することへの不安をみたものである(注10)。小学校、中学校ともに、「低活用」>「中活用」>「高活用」に、「不安(とても+まあ)」を感じていることがわかる。「低活用」「中活用」の教員はICTに不安が強く、授業での実施に躊躇しており、次の展開になかなか進まない。ICTが普及しない現状を示しているといえよう。不安を感じる教員の意識を変えていくことが求められる。
図6 小中学校別活用区分別 ICTを授業で活用することへの不安(一般校+実践校)
注10)報告書では、13ページで一般校の単純集計結果を掲載。
 表3では、活用区分別にICTを授業で活用することへの課題についてみたものである(注11)。教員が感じる不安の具体的な内容を探るうえでも参考になるだろう。小学校、中学校ともに、挙げられた課題に対し、「低活用」>「中活用」>「高活用」の順で「そう感じる(とても+やや)」回答割合が高い。とりわけ、「低活用」の教員は、「自分のICTスキルが不足している」「授業の準備に時間がかかる」「授業中の機器操作がたいへんである」「授業の計画をたてるのが難しい」に対して課題を感じている。教員の感じる課題をすくい取り、解決のための方策を考え、実践する。このサイクルを徹底することで、教員の不安は取り除かれていくことだろう。
表3 小中学校別 活用区分別 ICTを授業で活用することへの課題(一般校+実践校)
注11)報告書では、13ページで一般校の単純集計結果の一部を掲載。

ICT活用促進に必要なこと

 今回は、ICT活用度からICTへの教員の関わり方をみてきた。
 分析結果は以下のようにまとめられる。
①教員の属性によって活用度は異なる。
②「高活用」の教員は推進する役割を担当し、過去の促進機会を活用した。
③子どもに身につけさせたい力の実践は「高活用」の教員の方が多く行っている。
④「低活用」「中活用」の教員は、ICTで授業をおこなうことへの不安、課題を多く感じている。
 このように、「高活用」の教員は、子どもへ身につけさせたい多様な力を意識し、それぞれの力の育成について授業で実践している。ICTツールの活用には、おそらくストレスを感じることなく、よりよい授業、教材準備に励んでいるという姿がイメージできる。
 一方、「中活用」「低活用」の教員は、子どもへ身につけさせたい多様な力は意識しつつも、優先順位を決めて、授業で実践している。ICTをうまく活用できれば、もっとよいアイデアや教材が生まれ、多様な力を育成できる実践が可能となるのかもしれない。しかし、操作や準備へのストレスを感じ(ただし、ICTに対するネガティブな意識はない)、不安感がつきまとい、次のステップに進めないでいるという姿がイメージできる。
 「高活用」の教員は、現在のICT教育を促進している側に位置する。しかし、彼らがいきなり「高活用」になったというわけでもない。図3に示したが、授業に取り組みはじめて2年以上の経験者が多い。活用には、それなりに時間とコストがかかっている。図5に示したが、ICTを授業に活用できた要因には、促進機会(機器の操作機会があった、教材に触れた、授業事例を知った、機器操作のサポートを受けた)を利用している。彼らも、最初は「低活用」もしくは「中活用」であったはずだ。そこから、ICT活用機会を利用し、おそらく試行錯誤を経て、「高活用」の教員として、ICTを駆使するようになってきたのではないか。
 今後、さらに教員にICT活用が促進されていくためには、「低活用」「中活用」の教員のステップアップにかかっている。もちろん、個人の努力も必要だが、彼らに根強い不安を取り除く対応が求められる。そのためにも、ICTを授業で実施するうえで、課題として受けとめられている具体例に耳を傾け、対応策を練り、一つ一つ解決していくことが必要だ。
 そのための心強い味方として、「高活用」の教員がいる(注12)。彼らこそ、ICTをどのように授業に取り入れたらよいか、時間と労力を費やした現場経験者である。彼らは、「低活用」「中活用」の教員の不安や悩みを理解し、ICT教育の有効性を、自分の経験をもとにして具体的にアドバイスできる。図4に示したように、「高活用」の教員がICT推進・研究担当役割を担っている。しかし、その割合は30%にも満たない。学校全体として、彼らの経験、能力を活かす体制づくりが求められる。たとえば、一人でも多くの教員がICT活用の良さに触れる機会を用意したり(利用者の拡大)、「低活用」「中活用」の教員がステップアップできるサポート体制を充実させたりする(質の高い活用者の育成)ことが挙げられる。「高活用」の教員が中心となって、今後もICTが有効活用されていくことを望む。[END]
注12)他にも心強い味方として、ICT技術に詳しい専門家(支援員)の存在も忘れてはならない。