「○○してもいい?」と常に許可を求める子どもへの対応[やる気を引き出すコーチング] 

以前、私の講演会に来てくださったAさんというお母さんが、講演後に、こうおっしゃいました。
「うちの子どもが、すぐ、『お母さん、これ、食べていい?』、『お母さん、これで遊んでいい?』ときいてくるのですが、今日、その意味がわかりました。『このままでは、自分で何も決められない子どもになってしまう!』とすごく反省しました。接し方を変えてみようと思います」。

そのAさんが、つい先日、5年ぶりに、また、講演会に来てくださったのです。
「おかげさまで、子どもも、もう中学3年生になりました。今では、いちいち、親の顔色をうかがうこともなくなり、自分で将来の目標を決めて、受験もがんばる!と言っています」と、嬉しい報告をしてくださいました。いったい、Aさん親子の5年間には、どんなことがあったのでしょうか。

「評価」をし過ぎると顔色をうかがうようになる

5年前、Aさんは、このようなこともおっしゃっていました。
「私は、ずっと、ほめて育てるのがいいと思っていました。厳しく注意するよりも、良いところは良いと伝えて、自信を持たせることが良いと思っていたのです。だから、テストで、少しでも良い点をとってくると、『えらいね!よくがんばったね!』とほめ、絵を描けば、『上手だね!すごいね!』と、お手伝いをすれば、『いい子だね!』と、とにかくほめていました。

良かれと思っていたのですが、私の価値観のものさしにあてはめて、『それは良い、これはダメ』というメッセージを、無意識のうちに、子どもに与えていたのだと思います。だから、ほめられていないと、子どもは、常に、『これで合っているのか?』、『お母さんにいい子だと思われているのか?』を気にして、『これでいい?』と、いちいち、確認するようになったのだと気づきました。

子どもにプラスの言葉をかけることは大切だと思いますが、それが、『評価』の言葉ばかりだと、常に、相手の顔色をうかがうようになってしまうんですね。親の許可がなければ、何も判断できない子どもにしてしまうのは、かわいそうだなと思いました」。
短時間の講演の中で、そこまで感じてくださったAさんに、私は、とても感動しました。

「ほめる」よりも「認める」言葉を伝える

そして、5年後、Aさんは、こう報告してくださいました。
「以前、コーチングのお話を聴いて、『ほめる』ではなく、『認める』言葉のほうをたくさん伝えてみようと思ったんです。『えらい!』とか『いい子だね!』と言うのではなく、自分の気持ちを伝える、でしたよね?
『前よりも点数が上がっていて、お母さんも感動したよ』とか、『手伝ってくれて、お母さんはすごく助かったよ』など、感じたことを言うようにしました。そうすると、子どもが『じゃあ、次はこうしてみよう!』と自分で考えるようになるのです。

だから、子どもがどうしたいのかを聴いて、なるべくやりたいようにやってもらうようにしました。『あなたがそうしたいのなら応援するよ』と伝えました。これも、『ほめる』というより『認める』言葉ですよね?もう、最近は、全部、自分で決めて、自分でやっています。『この子は、この先、どこまで行ってしまうのだろう?』と思うこともありますが、親はできる限りのサポートをするだけだと思っています」。
本当に嬉しい5年後の再会でした。

確かに、私も、「石川さんは、お話が上手ですね。すごいですね」と言われるよりも、「石川さんのお話で勇気づけられました。聴いていて、涙が出そうでした」と言われたほうがよほど「これからもがんばろう!」と励みになります。

「ほめる」は、どこか上から目線で、評価されるニュアンスがあります。ですから、相手は他人の評価を気にして、顔色をうかがってしまいます。「認める」言葉で、自分で考える力と自分の存在価値を感じる心を育みたいものです。

(筆者:石川尚子)

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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