SNSトラブルが心配! 保護者が子どものスマホを見てもいい?

中学生になるとスマートフォン(以下、スマホ)を持ち始める子どもが増え、高校生になると9割以上がスマホを所有しています(*1)。
スマホは非常に便利な機器ですが、ときにトラブルや犯罪に巻き込まれる可能性もあります。近年増えているのが、SNSに起因するトラブルについて、メディアリテラシーについて研究されている千葉大学の藤川大祐先生に子どもたちのSNSの利用実態やその課題、保護者が心がけたいことをうかがいました。

SNSを使ったいじめや犯罪が増えている

スマホを利用している子どもにとってSNSは、友だちとの欠かせないコミュニケーションツールでもあります。中高生に人気が高いのが、グループでチャットができる機能を持つ「LINE」です。高校生の利用率は9割にのぼり(*2)、20から30ものグループに入っている子どもも珍しくありません。
部活の仲間と情報を共有したり、授業で分からないことをすぐに友だちに確認したりするのに活用している子も多いようです。ただ、グループから突然外されたり、悪口を言われたりするといったいじめにつながることもあるようです。自分の写真や動画が、知らないところで拡散してしまうケースもあります。「LINE」は、限られた仲間とやりとりするための閉じたサービスなので、グループ内のやりとりは第三者が監視することができないため、いじめが発覚しにくく、エスカレートしやすいと言えます。

そのほか、「Twitter」や「Instagram」(写真共有サービス。女子高校生を中心に写真の見栄えをオシャレにするフィルタが人気)、「ツイキャス」(誰でも簡単に自宅からライブ配信ができる配信サイト)なども人気です。こうしたサイトでも、軽卒な発言や安易に撮った画像が瞬時に拡散してしまう可能性があり、たとえ匿名で投稿したとしても、断片的な情報から投稿者の氏名や学校名などの個人情報が特定されてしまうことは少なくありません。

心配でも、子どものスマホを勝手に見るのは避けよう

保護者のかたから、「SNSでのトラブルが心配なので、子どものスマホのなかを見てもよいですか?」と質問されることがありますが、私は基本的には見るべきではないと考えています。特に思春期の子どもは、友だちとの世界や保護者には教えたくない自分の世界を持ちたい年頃です。子どものすべてを把握したがるような保護者の過度な介入は、子どもの自立の妨げになります。子どもに隠れてスマホを見たことがわかって、親子の信頼関係が崩れ、保護者には教えずに隠し事をするようになってしまいます。

スマホを持つときにはルール確認が必要

これからスマホを持つという場合は、まずはスマホ利用に関するルールを家庭で決めることが大事です。自転車や自動車など、私たちが新しいものを使うときは、何でもルールを確認すると思います。スマホもそれらと同じです。正しく使えるよう、保護者がリードして、ルールを設定しましょう。例えば、「夜9時以降は使わない」「勉強するときはリビングに置いておく」「ネットで知り合った人には保護者に内緒で会わない」「トラブルに巻き込まれたらすぐに相談する」といったルールです。

ただ、スマホやSNSに詳しくない保護者が、一人でルールを設定するのは難しいかもしれません。その場合は、ご家族やママ友などさまざまな人からスマホ利用にはどのような危険性があるか情報収集をしましょう。その上で、子どもにSNS使用にはどんなトラブルが潜んでいるのか説明し、トラブルに巻き込まれないようにするためにどうしたらよいか話し合い、一緒にルールを決めてほしいと思います。

ルールのなかで特にお勧めなのが、家庭にいるときは「スマホはリビングで使う」ということです。スマホの中身を監視していなくても、子どもがどんな表情でスマホを使っているのか見ていると、子どもの異変を感じ取ることができるからです。ためいきなどが多ければ声を掛けたりすることもできるため、悩みの発見につながるかもしれません。また、部活の連絡で必要だったり、勉強で分からなかったことを友だちに聞いたりするのに必要などというように、子どもがSNSを活用する理由を知ることもできるでしょう。

長時間利用が気になるなどの理由でルールを見直したい場合も、保護者が改めて情報収集することが大切です。例えば、子どもの仲のよい友だちのお母さんに家庭でどのようにスマホを使っているのか、どんなルールを設定しているか情報交換してみてはいかがでしょうか。保護者同士で相談し、「夜9時以降はSNSを使わない」と決めるのもよいかもしれません。一方的にルールを押し付けるのではなく、子どもの目線と合わせながら話し合いルールを決めていけるとよいですね。

*1 平成27年度青少年のインターネット利用環境実態調査(内閣府)
*2 中高生のICT利用実態調査2014(ベネッセ教育総合研究所)

プロフィール



千葉大学教育学部教授、教育学部副学部長。千葉市教育委員などを務めながら、携帯、ネットと安全に関わるための活動、発信を行っている。著書に『12歳からのスマホのマナー入門』『スマホ時代の親たちへ』(大空出版)など多数。

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