「子どもに…させる」がやる気を奪っている? [やる気を引き出すコーチング]

コーチングについて、まだまだ誤解されている、と思うことがよくあります。この夏も、子どもとのコミュニケーションについて、さまざまなご質問をいただきました。
「どうすれば、夏休みの宿題をやる気にさせられるでしょうか?」「子どもを机に向かわせるために、コーチングではどんな声かけをするのですか?」などです。
「子どもに……させる」という時点で、既にコーチングではなくなってしまっています。こちらの意のままに、相手をコントロールしようとしている時点で、もう子どもは自発的な気持ちなど持てません。
コーチングとは、「子どもに……させる」ものではなく、「子どもが……する」のをサポートするコミュニケーションです。この違いを、コーチする側が認識しておくことはとても大事なことです。

指導しなくても結果を出す子どもたち

先日、久しぶりにある中学校の先生にお会いしました。近況を伺うなかで、とても興味深いお話を聴きました。

「今年度から、新しい学校に変わったのですが、ここで、ドッジボール部の顧問をすることになりました。私はドッジボールなんてしたことがないので、どう指導していいのかまったくわからなかったんです。
それで、『コーチングを試してみよう』と思い、ルールをDVDで勉強して、子どもたちと接してみました。『もっと強くなるにはどうしたらいい?』『次はどうやったら勝てるのだろう?』『そのためには、どんな練習をしておいたらいいかな?』と質問をして、とにかく、子どもたち同士で話し合うよう任せました。
そうしたら、地区大会で優勝してしまったんです。案外、ドッジボールのことを知らないほうが、よいコーチができるのかもしれないと思いましたね。子どもたちの中に、ちゃんと結果を出す力があるんだな、ということをあらためて感じました。いかに邪魔をしないでその力を引き出すか、っていうことがコーチの役割なんですね」

とてもすばらしい成果と気付きに、私も心から感動しました。こちらに「答え」がなくても、子どもは自分で考え、自分で解決していきます。それを、この先生のように、質問などのコミュニケーションによってサポートするのがコーチングなのです。

子どもの中に「答え」がある

これは、小学6年生の娘さんを持つAさんから伺ったお話です。学校にお子さんのことをからかう男子がいて、しばらく「学校に行きたくない」と言っていた時期があったそうです。「先生に相談してあげようか」と言っても「いやだ」と言うので、Aさんは、見守ることにしました。それでも、朝になると、「学校に行きたくない」と言う日があって心配でした。

ある日のこと、また出かけるのをためらっているので、質問をしてみました。
「どうしたいの?」
「学校行きたくない」
「どうする?」
「行かない」
「行かないの?」
「でも、……それだと悔しい」
「悔しい? 他にはどんな気持ち?」
「……負けたくない」
「そうなんだ。他には?」
「……わかった! 今日、変なこと言われたら、○○ちゃんに助けてもらう!」
「そう! できそう?」
「やってみる!」
Aさんが思いもよらなかったことを言って、お子さんは学校に行きました。

帰ってきたお子さんに聞いてみました。
「どうだった?」
「今日は、まあうまくいった!」

そのあとは、それほど行きたがらない日もなくなり、気が付けば、いつの間にかこの問題は解決していたそうです。

Aさんはしみじみおっしゃいました。
「どうやって解決するかは子どもの中に『答え』があるんですよね。ちゃんと自分で解決できるんですよね。その力を親が信じて見守るのが一番の解決策ですね」。

まさに、これがコーチングの神髄だなと思います。

(筆者:石川尚子)

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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