片付けって楽しいね! 片付けって何のため?

ベネッセ教育情報サイトには、お子さまの片付けに関する悩みや相談が、数多く寄せられています。中でも、「子どもの物は子どもが自分で片付けてほしい」と考えている保護者のかたが多いようです。ただ、実際に子どもに片付けをさせるとなると、「何を片付ければよいのか」「どこから片付ければよいのか」「親はどこまで手伝うべきか」など不安な点も多いようです。
そこで、ライフオーガナイザーとして片付けと収納のアドバイスを行い、子どもの片付け方に関する書籍などで活躍中の鈴木尚子先生に、保護者のかたからの相談にお答えいただきます。また、子どもにとって片付けやすい収納方法や、片付けを続けるためのコツをご紹介します。

■「子どもが片付けてくれない」……保護者のかたの悩みとは

お子さまの片付けに悩んでいる保護者のかたの声を伺いました。

●男の子が2人いるので、いったん遊び始めると床がおもちゃでいっぱいになります。一緒に片付けても1時間以上かかる時があり、時々面倒になって、そのままにしてしまうことがあります。自分から片付けさせるためには、どうしたらよいでしょうか。

●子どものおもちゃがいろいろな所に散らかって困っています。ある物は玄関に、ある物は棚の上に、さらにソファと棚の隙間にもおもちゃがいっぱいあるので、必要な時は体をねじ込んで取っています。さらに、ソファの下の狭いスペースにも物があります。そういった物をどのように片付けさせたらよいのか、とても困っています。

●小学生の息子に、自分の物は自分で片付けなさいと言っていますが、なかなか自分からは片付けてくれず、つい怒ってしまいます。怒られた時や、親と一緒の時には片付けてくれます。けれども、自主的に片付けるわけではないので、しばらくたつと、子ども部屋はすぐにまた汚くなってしまいます。どうしたら自分から片付けるようになるでしょうか。

こうしたことを解決するためには、どうすればよいのでしょうか。

■「片付け」って何?

そもそも「片付け」とは何か、考えてみてください。「部屋をきれいにすること」でしょうか? 確かに、片付けをすることで部屋はきれいになりますが、それなら「掃除」でも同じです。「片付け」とは「物をもとあった場所に戻すこと」です。しかし、お子さまに何度「片付けなさい」と言っても、物を置く場所が決まっていなければ、片付けることはできません。
たとえばテーブルの上にある雑誌や学校で配られたプリント、母親の化粧ポーチなどを、「食事するのに邪魔だから、今だけはじに寄せておこう」ということはないでしょうか。そうしたことは単に「物の移動」に過ぎず、「片付け」ではありません。

また、「片付け」は、「次の作業をすぐにできるようにするための準備」でもあります。何かした時の後始末ではなく、「準備の前段階の作業」が片付けだといえます。

■片付けって何のため?

片付けは何のためにするのでしょうか? それは次の2点です。

●家族みんなが気持ちよく過ごせるようにするための手段
●毎日を安心して暮らすための手段

片付けはお客さまがいらっしゃる時に、部屋の中を見苦しくなく整えるための手段だと思われているかもしれません。しかし、「片付け」の正解は、部屋の中に何も置かれていなかったり、すべてがしまわれて整然としていたりすることではありません。片付けとは本来、家族みんなが気持ちよく過ごせるようにするための手段なのです。使いたい物をすぐに取り出すことができ、家族にとって居心地のよい空間をつくることが必要なのです。

たとえば、母親の趣味は時間を見つけて可愛い洋服を作ること、父親の趣味は休日に家族でキャンプ、というご家族の場合を考えてみましょう。そんなご家族で、もしテーブルに積まれた学校のプリントやおもちゃをしまわなければミシンが出せなかったり、キャンプ用品が押入れの奥深くに入っていて見つからなかったりすると、ストレスのもとになります。

片付けとは見た目を整えることだけではありません。「どんな暮らしをしたいのか」「必要な物は何か」「家族みんなが心地よいのはどんな状態か」など、片付けの先にある暮らしそのものを考えてみましょう。お子さまの片付けやお子さまの暮らしのスペースを考える際、少し遠回りに感じるかもしれませんが、お子さまに「片付けなさい」と言う前に、保護者のかたが片付けの先にある暮らしについて考えてみるとよいでしょう。
片付けは一緒に暮らす家族みんなの問題です。そして、お子さまに伝える前に、片付けの考え方についてはもちろん、暮らしのことや育児の方針についてもぜひ保護者のかたの間で話し合っておきたいものです。そのあとで、お子さまを交えて「片付けとその先にある暮らし」について考えましょう。

年齢によっても違ってきますが、「お友達がたくさん遊びに来てくれるようなお部屋にしようね」「自分で片付けられるようになると助かるな」という目的も伝えましょう。そのうえで、お子さまにも希望や不満があるようでしたら、聞いてあげてください。
「電車のおもちゃを部屋いっぱいに広げて遊びたい」のであれば、床に洗濯物や買い物袋がいっぱいでは困ります。「洋服をしまいたくても引き出しがいっぱいでしまえない」のなら、持っている洋服の量を見直す必要があります。このように「何をしたいのか」「何に困っているのか」を考えれば、片付けの方向性が見えてくるでしょう。

保護者のかたは、お子さまの意思を尊重しながら、片付けやすい環境を整えてあげてください。


  • <動画>片付けって楽しいね! 片付けって何のため?

プロフィール


鈴木尚子

アパレル業界で勤務後、ライフオーガナイズを学び、現在は片付けと収納のアドバイスや講演を全国で行う。子どもの片付け方に関する書籍の執筆や、女性誌などでも活躍中。

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