「答え」から「問い」へ ~「探究的な学び」のススメ~

今は入試シーズンまっただ中。受験生を持つ親としては、とても落ち着いていられない状況ではないかと思います。実は、この「入試」を含む教育の制度改革議論が国で進んでいます。改革で注目されている一つが「探究的な学び」です。


「答え」から「問い」へ ~「探究的な学び」のススメ~

■以前より子どもの勉強時間が増えた

ベネッセ教育総合研究所が1990(平成2)年から小・中・高校生を対象に実施している「学習基本調査」の結果によると、小・中学生は2001(同13)年を底に、平日の学習時間が回復しています(高校生は06<同18>年が底)。また、OECDが実施した15歳の学力を測定する国際調査(PISA「生徒の学習到達度調査」)でも、日本の子どもたちの学力はここ数年で回復し、世界トップクラスになりました。

  • ※ベネッセ教育総合研究所「第5回学習基本調査」
  • http://berd.benesse.jp/shotouchutou/research/detail1.php?id=4801

なぜ、子どもの学力や学習時間が好転したのでしょうか。それは、学校でのさまざまな取り組みによるところが大きいと思います。たとえば、宿題の量は以前よりも増えました。また、クラスを半分に分けて少人数で丁寧な授業を行ったり、土曜日に希望者を集めて補習を行ったりするなど、学校の先生方によるさまざまな取り組みが積極的に行われてきました。そうした努力が、子どもたちの学力向上や、学習時間の増加につながったことは間違いないと思います。

■知識量での勝負はロボットに任せる時代へ

でも手放しでは喜べません。未来の社会で必要な力は変化していくからです。では、今の子どもが大人になるころの日本は、いったいどうなっているのでしょうか。10年後、20年後の未来には、自動翻訳ロボットや自動料理ロボットなど、技術はどんどん進化し、人間が今までしてきた作業の多くを、機械が担う時代になるでしょう。「一つの正解」に最短で到達する力は、人間よりも機械のほうに分があるかもしれません。そんな時代を生きる今の子どもたちに必要な力は何でしょう。それは、正解が一つではない、新たな価値を創るための力です。「多様な解」のある課題を発見し、自分なりの答えを探し実行する。そのことを通じて新しい価値を生み出す力、すなわち「探究的な学び」の力が必要になると思います。

今までの学びは、「一つの正解」に到達する学びが中心でした。そのため、学習時間が増加し、学力が向上したからといって、それで十分とはいえません。学校でも「探究的な学び」を取り入れた授業に少しずつ変わりつつありますし、大学入試も、「探究的な学び」の力を問うものに少しずつ変わっていきます。

■遊びの中にある「探究的な学び」

探究的な学びのわかりやすい例を挙げると、それは小さい子どもの遊びの中にあります。私の息子が1歳のころ、台所の下の引き出しを開けて、鍋やフライパンを全部出し、しゃもじや泡立て器を駆使しながら、いろいろな音を出して遊んでいました。大人から見れば、何の意味もない行為かもしれませんが、子どもにとっては、まさに正解のない「探究的な学び」そのものです。「面白そうだな」と思うことをまずやってみる。どうすればもっと面白くなるのかを考えて試してみる。そうした経験の中で、新しい発見をしていく。子どもはもともと探究的な学び手なのです。

子どもがだんだん大きくなるにつれ、「○○をしなさい」「それは△△と言ったでしょ」などと子どもに言う機会が増えていませんか。親が先回りして、一つの答えを言ってしまっているのですね。子どもによかれと思う半面、親自身にとってもそうすることが効率的だと思うから出てくる言葉です。私も同様です。

「どうすればもっとうまくいくだろう?」「どうすればもっと面白くなるだろう?」

この問いかけは、探究的な学びを生み出す魔法のことばで、小さい子どもだけではなく、大人にも共通に使えます。でも実践するためには時間と労力がかかり、忙しい毎日のなかでは難しいかもしれません。それでも、一日一度でよいので、この問いを子どもに投げかけてみてください。今まで見えなかった新しい発見がきっとあると思います。小さい子どものころのワクワクした気持ちが戻ってくるかもしれません。

(筆者:小泉和義)

プロフィール


小泉和義

ベネッセ教育総合研究所 主任研究員。全国の小学校、中学校、高等学校などの現場を取材し、子どもたちの実態や学校での指導課題を踏まえ、「今」と「これから」の教育に必要なことは何かを発信し続けている。

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