前向きな言葉を使って子どもの見本になる大人たち オランダの教育事情とは
コーチングのプロ・石川尚子氏は、オランダの教育について、非常に興味を持って研究しているという。教育制度や手法のユニークさが特筆に値し、先生や保護者の子どもに対する接し方に、非常に感じるところがあるそうだ。ベネッセ教育情報サイトでは、石川氏に詳しく伺った。
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オランダの小学校では、全員が一つのことに一斉に取り組むのではなく、子ども自身が学びたいことを自分で選び、自分のペースで取り組むという授業スタイルがよく見られます。じっと机に座って先生の話を聴くよりも、思い思いの場所で立ったり動いたり、友達と相談したり協力したりしながら、各自の課題に取り組む時間が長いのです。子どもたちは、基本的にやりたいことをやっているので、とても楽しそうに取り組んでいます。
時には、静かに先生やほかの子どもたちの話を聴く時間もあります。じっと座っていられなかったり、おしゃべりを続けたりする子どもも当然います。そんな時も、先生は、声を荒げるようなことは決してありません。「今、何の時間だっけ?」「誰かが話している時はどうするんだっけ?」と穏やかに問いかけます。保護者のかたが送り迎えをする光景を見ていても、大人が子どもと穏やかに向かい合っている姿勢が感じとれます。
オランダでは、大人が子どもに向かって声を荒げる場面にまったくと言っていいほど出合いません。子どもたちは、自分の感情をコントロールできている人を「大人」として尊敬します。そして、その人の言葉には耳を傾けてみようと思います。声を荒げなくても、子どもたちは静かに話を聴けるし、自ら動くのです。
オランダの、ある小学校の校長先生の「大人が常に前向きな言葉を使うようにしています。私たちが子どもたちのお手本ですから」という言葉があります。物事を肯定的にとらえて言葉にしていくことは、確実に子どもたちの意欲を引き出します。教育とは、ただ制度を整備すればよいというものではないと感じます。「声を荒げない」「前向きな言葉を使う」だけでも、日本の子どもたちは、もっとイキイキと楽しく勉強にも向かえると確信しています。
出典:オランダの教育現場に見る「大人」の対応 -ベネッセ教育情報サイト