「花粉症シーズン到来! 専門医に聞く、効果的な治療と対策」(前編)

 今年も、花粉症シーズンがやってきました。鼻水や鼻づまり、目のかゆみといった症状は、勉強への集中を妨げる要因となりますから、特に受験生のいる家庭では万全の対策を講じたいところです。専門医によるアドバイスを交え、花粉症の治療や対策に役立つ最新情報をお伝えします。

 年々増加する花粉症患者。その原因は?

 「花粉症の患者は年々増えており、今や国民の4人に1人が悩まされていると言われます。現在、症状がない人でも、ある日突然発症することがありますから油断は禁物。患者はもちろん、そうではない人も、花粉症にならないために日頃から対策をしておくに越したことはありません」と注意を呼びかけるのは、たなか耳鼻咽喉科の田中伸明院長。

 

花粉症に悩む人が増えている明確な原因はまだ特定されていませんが、全国各地のスギの生育状態がその一因と推測されています。「スギが本格的に花粉を作り始めるのは、植林して25~30年が経ってから。40~50年後に伐採されて材木になりますが、現在、スギの多くは樹齢30~40年で活発に花粉を作る時期にあたるため、以前より飛散量は増加しています」(田中院長)

 

さらに、生活環境の変化も関係していると考えられています。「『衛生仮説』と言われていますが、乳幼児期から清潔な環境で過ごすことで免疫系の発達に影響が及び、アレルギーを発症しやすくなるという説が、花粉症患者が増えている原因の一つとして有力視されています」(田中院長)

 

 

今年の花粉飛散は「東高西低」。東日本は特に注意を!

 花粉症は花粉の飛散量が増えるほど症状が重くなり、また新たな発症者が増える傾向があります。今年の状況について、環境省が発表したスキ・ヒノキの花粉飛散予測を見てみましょう。

 

◎昨年と比べた飛散量

【かなり多い】

 東北地方、関東地方、甲信地方、北陸地方、東海地方

【並みか、やや多い】

 近畿地方、中国地方

【少ない】

 四国地方、九州地方

 

◎飛散のピーク時期

【2月下旬】

 九州地方

【3月上旬から中旬】

 四国地方、中国地方、近畿地方、東海地方、関東地方、北陸地方

【3月下旬から4月上旬】

 東北地方

(環境省/平成27年春の花粉飛散予測(第2報)より(平成27年1月29日発表))

 

以上のように、「東高西低」といえる状況で、昨年を上回る量の花粉が飛散する地域が多いことが分かります。また、ピーク時期を過ぎても、例年、4月下旬から5月上旬頃まで飛散は続きますから、対策を継続する必要があります。

 

 

自己判断で服薬せずに、まずは耳鼻科などで受診を

 この時期、ドラッグストアを訪れると、花粉症向けの薬や対策グッズが目立つ場所にズラリと並んでいます。自己判断で市販薬を服用する人もいますが、できれば耳鼻科などで受診してほしいと、田中院長は話します。「花粉症の典型的な症状であるくしゃみや鼻水、鼻づまりは、風邪や副鼻腔炎、通年性アレルギー性鼻炎などでも起こります。実際、当院でも、花粉症と思って来院したけど実は他の原因だったという患者さんが、毎年少なからずいます。花粉症と思い込んで自分で選んだ薬を服用するだけでは、なかなか治らなかったり、症状が悪化したりするおそれがありますから、診察や検査を経て、治療法や対処法を検討したほうがいいでしょう」

 

花粉症の症状を放置すると、副鼻腔炎などを起こしやすくすることもあるので注意が必要とのことです。また症状によっては、検査をして原因を特定したほうがいいケースもあるといいます。「花粉症の原因として特に多いのはスギやヒノキですが、他にもカモガヤやブタクサなど50種類以上の花粉で発症することがあります。スギやヒノキが飛散していない夏や秋に症状が出る場合は、別の花粉に反応しているか、ハウスダストやカビなどによる通年性アレルギーを疑ったほうがいいでしょう」(田中院長)

 

 

後編では、具体的な治療法や日常の対策を紹介します。


プロフィール


田中伸明

たなか耳鼻咽喉科院長。獨協医科大学医学部卒業。東京女子医科大学第二病院(現東医療センター)耳鼻咽喉科病棟医長、医局長などを経て、「たなか耳鼻咽喉科」の院長を継承。たなか耳鼻咽喉科/東京都豊島区目白5-4-7

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