脳科学者の茂木健一郎氏が語る、ノンジャンル、多読のすすめ
読書は子どもの言語能力、思考力、文章力を育むのに大きな効果がある。多くの保護者が、我が子を本に親しませたいと願っていることだろう。多くの本を読むことで知られる脳科学者の茂木健一郎さんは、子ども時代からさまざまな分野の本をまんべんなく、たくさん読んできたと言う。茂木氏にノンジャンルで多読することの効果について伺った。
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僕は科学者になるために理科の本をいっぱい読みました。それだけでなく、子どものころから文学や社会科学、経済など、ありとあらゆる本を読んでいました。小学校のころに父親の『マルクス・エンゲルス全集』や『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(マックス・ウェーバー著)
を読んでいたんです。「これは子どもの読む本ではないな」という意識は何となくありましたが、あえて自分に「無茶ぶり」していました。
ちなみに、僕は英語で苦労した記憶がありません。高校のときに自分に「英語の原書をたくさん読む」という無茶ぶりをしたのが効いたようです。『赤毛のアン』シリーズや科学書などの英語の原書を、3年間で30冊ぐらい読みました。最初は苦しかったのですが、読み終えたあとは、大学入試くらいの英語だったら問題ない状態になりました。無理そうなものを乗り越えて達成感を味わったときに、ドーパミン(脳内で作られる神経伝達物質)が出て脳の回路が強化されるんです。
人間は自分に必要な栄養素を知っていて、「今日は何となく○○が食べたい」と無意識のうちにバランスを取る性質があります。僕の本選びもまさにそう。英語の本を読みすぎたなと思ったら、マンガを読もうかなとか、自然にバランスを取りながら本を選んでいます。
小さいうちからいろいろなジャンルの本に親しんでいれば、いま自分に足りないものに気付きやすくなります。僕はマンガもたくさん読みましたよ。栄養素としてマンガだけだと偏りますから、まんべんなく雑読・乱読するのがいいんです。