脳科学者が教える最初の図鑑の選び方

『MOVE はじめてのずかん みぢかないきもの』を監修された脳科学者の瀧靖之先生。
インパクトのある生態写真が話題を呼び、人気を集め続けている「MOVEシリーズ」ですが、図鑑と子どもの知的好奇心にはどんな関連があるのでしょうか。瀧先生に伺いました。

子どもだからこそ、本格的な図鑑を手にとってほしい

図鑑は、子どもが世の中の広がりを最初に知るツールです。子どもというのは大人が思っているほど幼いわけではなく、興味関心も旺盛で記憶力もあるもの。子ども向けのライトなものではなく、ダイナミックな写真が目に飛び込んできて、きちんと生きものの名前が載っている本格的なものを選ぶと、お子さまの「もっと知りたい!」という知的好奇心を刺激しやすくなります。

たとえば、生きものの名前ひとつをとっても、トンボという全体の名前だけではなく、ギンヤンマ、シオカラトンボ、オニヤンマなどと、種類の名称まで載っている図鑑の方が興味が広がると思います。
とくに、いろいろなことに興味をもちはじめる2歳くらいの時期は、好奇心を伸ばす絶好のチャンスです。図鑑を通して世の中の広がりや奥深さに触れるきっかけを作れるといいですね。

脳には発達のタイミングがあり、最初は見たり聞いたり感じたりと、感覚に関わることが発達します。続いて、母国語の言語野が発達し、そのあとが社会性、運動野、言語野、前頭前野という順番に発達します。2歳の時期は、こうした発達の基盤になる時期でもあるので、まずは親子で愛着形成としてお子さまと触れ合いながら、一緒に図鑑を見てあげてください。読み聞かせをするのもいいですね。

 

本当に大切なのは図鑑選びよりも、本との距離感

講演などでは保護者のかたから、図鑑の買い方について「一冊目は何の図鑑がいいですか?」と質問を受けることがあります。お子さまによって興味や関心があるものはそれぞれ違いますから、恐竜でも魚でも昆虫でも、我が子が興味をもちそうなものを自由に選んでください。お子さまの興味の対象がまだわからないという場合は、保護者のかたが好きな図鑑でもいいと思います。

大切なのは、買ったあと本棚の奥にしまい込むのではなく、リビングやダイニングなど、すぐ手の届くところに置いておくということです。テレビなどで、関連する話題が出たり、窓の外を鳥が飛んでいるのを見たりしたときに、お子さまが興味をもったらすぐに手にできるようにしておきましょう。普段は動物や昆虫に興味をもたないお子さまでも、何かの瞬間に興味のスイッチが入ることもあります。そうしたときに保護者のかたがすかさず背中を押してあげることが重要なのです。

知識とリアルな体験を結びつけると知的好奇心がもっと伸びる!

知的好奇心を伸ばす上で重要なのは、図鑑や本で見たものと現実のものをいかに結びつけるかということ。
たとえば、昆虫図鑑で蝶に興味をもったら一緒に野山に行き、本物の蝶を観察したり、魚図鑑で魚に興味をもったら水族館に行ったりする、本物と結びつける体験ができるよう、保護者のかたはサポートしてあげてください。
お子さまに図鑑を買い与えて終わるのではなく、保護者のかた自身がそれを使って楽しむ姿を見せるのです。その姿から、子どもは熱中する体験というのがどういうことなのかを学び、自分の好きなもの、面白いものを見つけたときに、どんどん追求していく姿勢が身につきます。
こうして、世の中はすごく広くて深いものだという体験を繰り返すと、子どもたちの知的好奇心はぐんぐん伸びていきます。

今回、瀧先生が監修をされた図鑑『MOVE はじめてのずかん みぢかないきもの』はその名のとおり、身近な生きものを取り上げています。動物園や公園、野山などで見られる生きものがほとんどなので、ぜひ親子で図鑑を見た上で、楽しみながらお子さまの知的好奇心を伸ばしてあげられるといいですね。

プロフィール


瀧靖之

東北大学 加齢医学研究所 臨床加齢医学研究分野 教授
医師。医学博士。東北大学理学部の生物学科で、ヒトの血液の赤血球について研究している中で、研究だけでなく「世の中にもっと役立ちたい」と思い、受験勉強をし直して、理学部を卒業後、同大学医学部に再入学。卒業後、東北大学大学院医学系研究科博士課程修了。脳のMRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達や加齢のメカニズムを明らかにする研究者として活躍。読影や解析をした脳のMRI画像は、これまでに16万人に上る。

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