Society 5.0の時代へ。社会の変化を見据えた新時代の理工学部とは【変わる大学】

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今、これまでの情報社会「Society 4.0」に続く、新たな5番目のステージとして、超スマート社会ともいえる「Society 5.0」(※1)が実現しつつあります。今後の社会は、AIやIoT(Internet of Things)、ロボティクス等の先端ICTが産業や生活のさまざまな分野に関わり、あらゆるものがイノベーションされ、急激に変化していきます。
そのような中で、大学の理系教育においても社会の変化に対応して、さらに先取りする学びが必須となっています。そこで今回は「Society 5.0」を見据え、2022年に生まれ変わる成蹊大学の理工学部(※2)についてご紹介します。

この記事のポイント

Society 5.0社会で活躍するために求められる力

スマートフォンの普及によって、私たちはパソコンやテレビの前だけでしか見られなかった動画をいつでもどこでも見られるようになり、目の前の景色を付属のカメラで手軽に撮影して、SNSを通じて全世界の人々と共有できるようになりました。技術の進歩は生活や産業、ひいては社会そのものの変化に直結しています。また、産業や社会の変化は、働き方や雇用に対するニーズの変化にも繋がっていくことが予想されます。さらなる技術の発達が予想されるSociety 5.0社会において、理系人材にはどんな力が求められるのでしょうか。

まず、自分の軸となる専門性を確立することです。一つの分野を深く掘り下げて学び、身に付けることで、誰にも負けない自分の強みを持っていることが必須になります。さらに、異なる専門性を持った人と協働できる力も欠かせません。技術革新によって急激な変化を遂げつつある現代社会の課題は複雑化していて、一つの専門領域では解決することが難しくなっています。複数の視点から課題を捉え、新しい解決方法を創造していくことが必要になるでしょう。機械工学とIT、化学とデータサイエンス、といったさまざまな理系分野に加え、経営学、社会学、法学といった文系分野の視点を持つ人と協働することで、これまでにない解決策が導けるはずです。

また、あらゆる分野においてAI等の技術活用が進み、それらの技術を使いこなす高度なICT活用力も必要だと考えられています。AIを素材開発に応用した「マテリアルズ・インフォマティクス」や、モノをインターネットに接続し利便性を高める「IoT技術」等、ICTを他分野に応用させる研究が、現在盛んに行われています。このように技術が進展するSociety 5.0社会において、専門知識とICTを高度に駆使していくことがますます求められるでしょう。

3つの資質を備えた「新しい理系」を養成する

2022年4月、成蹊大学理工学部は従来の3学科体制を発展的に組み替え、1学科5専攻体制(データ数理専攻、コンピュータ科学専攻、機械システム専攻、電気電子専攻、応用化学専攻)として生まれ変わります。

新しい理工学部では、情報社会から高度ICTがリードする「Society 5.0」社会で活躍できる以下の3つの資質を備えた「新しい理系」を養成します。

1つ目は、例えばロボティクスにIoTの知見を掛け合わせて工場を自動化するといった、高度な専門性と他の理系分野を融合させて新しい価値を創造できる「専門性×融合分野」。
2つ目は、自宅で利用できるように行政サービスをデジタル化するといった、ICTを駆使して社会の変化に最適なカタチで専門性を発揮できる「専門性×ICT」。
3つ目は、イベントの企画運営を行う企業とビッグデータの研究者が協力して効率のよい地域振興施策を立案するといった、他の専門性を持った人々と連携して社会課題を解決できる「専門性×コラボレーション」です。

従来の枠組みを越え、新たな学びを実現

成蹊大学の新しい理工学部は学問分野を明確にした5つの専攻を設置し、自分の軸となる専門分野を確立させることができます。さらに、専攻の垣根を越えて学生の興味関心に応えるしくみも整っており、学びの幅を広げることが可能です。

また、意欲ある学生に向け、各専攻分野にとらわれない社会的要請の高いテーマについて学ぶ「特別プログラム」を設置。異なる専門性を持った学生とグループワーク、フィールドワーク、ディベート等のアクティブラーニング形式で学修します。

社会での実践力を鍛えるために、「連携プロジェクト」も実施。異なる専攻の学生同士が協働し、企業や地域の社会課題をチームで解決するため、課題に対する調査の実施、プロジェクトの進捗管理等について実践的に学びます。

このように理論と実践を組み合わせ、各専攻の垣根を越えた融合型の先進教育で、社会で活躍するための視野や柔軟な発想を養うことをめざしています。

全学生が確かなICT活用力を身に付ける

成蹊大学の新しい理工学部では、全ての専攻の学生が卒業後の実社会で通用するICT活用力を必修で身に付けます。各専攻の専門知識とICT活用力を駆使して、「Society 5.0」社会や企業における課題解決に取り組めるよう、情報系以外の専攻も含めた全専攻に、「ICT基礎科目」群を配置し、コンピュータ技術の基礎からプログラミング、システムネットワーク、データサイエンス、AIまで学ぶことができます。

文理融合のワンキャンパスで、多角的な視野を養う

国内の大学では、理系学部と文系学部のキャンパスが異なる場合が多く見受けられます。しかし成蹊大学の理工学部は、文系学部(経済・経営・法・文)と同じ吉祥寺のワンキャンパスで4年間学べることも大きな特長です。文系の学生とともに行う授業や課外活動を通して、多角的な視野を養うことに繋がっています。

例えば、学部横断型の産学連携人材育成プログラム「丸の内ビジネス研修(MBT)」は、文系・理系の枠を越えたチームを編成し、企業の課題解決に挑みます。異なる考え方や専門分野への相互理解を深めることで、協働して課題を発見、解決する力を身に付けます。

また、2020年4月からは「副専攻制度」を導入。所属学科の専門教育に加え、学生一人ひとりの興味関心に応える多様な学びのしくみが整備されました。総合的なIT活用の基礎知識を身に付ける「総合IT」をはじめ、「社会福祉」「国際関係」「データサイエンス」等、全17領域が用意されており、マルチな専門性を備えるチャンスが開かれています。

このように成蹊大学では、全ての学部がワンキャンパスに集まる利点を生かしたプログラムも数多く展開されています。学びだけでなく、課外活動等でもバックグラウンドが異なる人が協働できるため、活発な議論や創造的な取り組みが生まれています。

望ましい「Society 5.0」の構築・発展に向けて産官学で連携する成蹊大学

成蹊大学は、三菱創業150周年記念事業委員会からの支援により、2020年4月に「Society 5.0研究所」を開設しました。

分野や業態を越えて、産官学のリーダーや研究者がスクラムを組み、科学・技術の革新を人類の真の幸福に繋げるために総合的視点から行う「学融合的研究」、社会課題解決の現場で技術の社会実装・実践を担う自治体や企業と協力して行う「連携実践活動」、Society 5.0社会を生き抜き、それを支える人材を育成するために教材開発、講座運営、教員研修等を行う「人材育成活動」を3つの柱として、成果の社会還元をめざした活動を行っています。

「Society 5.0」を見据えて、生まれ変わる理工学部。それぞれの専門性を確立しながら、専攻や文理の垣根を越えて学際的・融合的に協働できる「人財」を育成する成蹊大学の変革は、これからの大学教育における見本の一つになることでしょう。

※1 内閣府「Society 5.0とは」
https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/

※2成蹊大学 新理工学部サイト
https://www.seikei.ac.jp/university/rikou2022/
理工学部理工学科(2022年4月開設)

成蹊大学
https://www.seikei.ac.jp/university/

成蹊大学 入試情報サイト
https://www.seikei.ac.jp/university/s-net/

本掲載情報は2021年12月時点のものです。
監修 / 進研アド

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