高校以降の学びにつながる受験勉強とは?【高校受験】
1月末となり、多くの受験生の皆さんは、まさに追い込みの時期に入っていることと思います。苦手な単元や弱点の克服に、ギリギリまで苦闘している受験生も多いかもしれません。
受験勉強は入試を突破するためだけのものと考えられがちですが、実はお子さまが今学んでいることは、この先一生の学びの基礎となります。
今回はこの時期、保護者のかたに意識しておいていただきたいことについてお話しします。
AI化の時代に苦手教科を「捨てない」ことの意義
苦手な教科や単元は、入試を目前にした受験生にとっては総合得点の足を引っ張るものとしか感じられないかもしれません。しかし、保護者のかたは、入試に向けて苦手の克服に取り組んでおくことの意味を理解し、折に触れてお子さまを励ましてあげていただければと思います。
得意教科の点数を上げるより、苦手教科の点数を上げることのほうが易しく、志望校の合格可能性を底上げできるという利点ももちろんありますが、それだけでなく、高校入学以降の学びにもおおいに役立ちます。
たとえば数学は、ますますICT化やAI(人工知能)化が進むとみられるこれからの社会において、欠かせない教科といわれています。今後必要とされる力は、複雑な計算を間違えずにやるとか、難問を解くためのテクニックをたくさん知っているといったことではなく、どのような原理・原則を組み合わせて使えば求める答えが出るかを考え、AIに実行させられる力です。数学的な考え方の基礎を身につけておくことが重要なのです。
近年「STEM(ステム)教育」という言葉がよく聞かれるようになりました。「STEM」とは、Science(科学),Technology(技術),Engineering(工学),Mathematics(数学)の頭文字を取ったもので、今後の社会では、これらの領域の重要性が増してくると考えられています。これにArt(芸術)を加えて「STEAM教育」とすることもあります。
また、言語によるコミュニケーションや表現を学ぶ国語・英語はどの分野に進む場合でも必要とされることは間違いありません。また、グローバル化や多様化が進む中で、ある現象を歴史的に、あるいは経済・産業のしくみからとらえるなど、多面的なものの見方を養う社会科の重要性も増してくると考えられます。
つまり、「自分は文系だから理系科目は捨てていい」「理系だから文系科目はまじめにやらなくていい」という時代ではなくなってきているのです。理想論をいえば、中学校で学ぶ9教科は、実技4教科も含め、高校以降の学びの基礎であり、長い人生においても大切です。
受験勉強が「汎用性のある学力」の基礎となる?
変化の激しい社会の状況から見て、今の子どもたちは同じ企業、同じ業種の中で一生働き続けるとは考えにくいでしょう。今後必要とされるのは、環境や業種が変わっても、その中で自分らしさを生かせる働き方を見つけて、力強く生き抜く力だと思います。
環境の変化に対応するためには、汎用性のある学力と、学び続ける姿勢が不可欠です。受験生の皆さんは、入試に向けて、中学の学習の総仕上げに取り組んでいるわけですが、それは汎用性のある学力の基礎であり、一生の財産といえるものです。
もちろん、受験生本人は目の前の入試を突破することに必死で、そんな先のことを考える余裕はないと思います。特に苦手な教科・単元の学習では「こんな勉強、なぜ必要なのかわからない」といった気分になることもあるでしょう。苦手分野があるのは当然で、どの教科もまんべんなくできることが大事なのではありません。大切なのは現時点で苦手を「捨ててしまわない」ということです。入試突破という目標のもとで、高校以降の学びの土台が築かれているのです。
暗記や受験テクニックだけの受験勉強は、たしかに入試が終わったら消えてしまいますが、今は入試も、高校での学びも変わりつつあります。その場しのぎの勉強ではなく、高校以降の学びに直結する各教科の基礎を固めることが、結局は入試での望ましい結果にもつながるのです。
お子さまがつらそうなときは「苦しいかもしれないけれど、あなたは今、一生の財産になるような大事な勉強をしているんだよ」といったことを伝えてあげられるといいですね。そうすれば、入試が終わったとたんにすべてを忘れてしまう、という「悲劇」も避けられると思います。
お子さまのご健闘をお祈りしております。