関東学院大学 人間環境学部 健康栄養学科(2) アイスクリーム、ウインナーを一から作って食品の本質に迫る[大学研究室訪問]
日本が転換期を迎えた今、大学や学部でどう選び、そこで何を学べば、お子さまの将来が明るく照らされるのでしょうか。関東学院大学人間環境学部健康栄養学科の津久井学先生の研究室をご紹介します。前回は、津久井先生のご研究内容について伺いましたが、今回はゼミでの学びや、卒業研究についてお聞きしました。
■管理栄養士を目指す学生に食品の本質を学んでほしい
2014年新作 アボカドわさび醤油アイスクリーム
私のゼミナールには、ヤマイモ、オクラ、モロヘイヤといったネバネバ食品の研究の他に、もう一つの大きな特徴があります。それは3年次前期に行う食品製造の実習です。関東学院大学の人間環境学部健康栄養学科は、管理栄養士の国家資格合格をめざし、卒業生の多くが病院などの医療機関、社会福祉施設、食品メーカーなどに就職しています。そのため授業は、資格取得を意識した内容になっています。思っていたよりも座学で学ぶ時間が多いと感じる学生も多いかもしれません。だからこそゼミでは、実習を通してさまざまな食品の製造工程を体験し、食品に対する理解を深めることを狙っています。これまで、アイスクリーム、パスタ、パン、ベーコン、ウインナーなどを一から作りました。
毎年、恒例になっているのがアイスクリーム作りです。夏のオープンキャンパスで販売するため、ゼミの学生に新メニューを開発してもらいます。今年の新メニューはアボカドわさび醤油(しょうゆ)。その他にもバニラ、チョコ、ストロベリー、紅茶など、7~8種類を計400食ほど用意しました。原材料にこだわっているのでとても評判はよく、毎年お昼すぎには完売してしまうほどの人気です。興味を持たれた中学生・高校生のみなさんには、大学見学と同時に、ぜひアイスクリームも味わってほしいですね。
実習のレシピは、学生自身に考えてもらうようにします。それを私がチェックし原材料の配合を変えたり、私が試してほしい調理法を入れてもらったりして、進めています。過去には、近くの海で学生たちが釣ったカワハギを使った蒲鉾(かまぼこ)を作りましたが、とてもおいしかったですね。普段の学生実習では、時間が限られているため、じっくりパンの発酵を観察したり、大豆から醤油を作ったりすることはできません。ゼミでは時間をかけてじっくり食品の本質に迫ってもらえればと思います。
■卒業研究が新商品開発につながるチャンス!?
自分のテーマの研究に取り組む学生
3年次の後期から卒論研究の準備に入ります。卒論のテーマは私が用意し、学生たちが話し合って、自分のテーマを選びます。テーマは大きく分けて二つあり、一つ目は、私の研究している植物性粘性物質の性状解析。二つ目は、企業との協同研究です。ネバネバ食品に関する研究室は、日本だけでなく世界においても珍しく、数多くの企業から相談を受けています。現在研究室では、ヤマイモのかゆみ低減化についての研究、ヤマイモの栽培法の違いによる褐変(茶色くなること)や粘性の差異について研究しています。企業との研究では、自分の研究成果がダイレクトに社会で役立つという経験を積むことができます。実際に研究がご縁で、食品メーカーに入社した学生もいるんですよ。研究者をめざす学生はまれですが、管理栄養士として巣立つ学生にとっても社会とつながるよい経験になるでしょう。
その他にも、私の研究室には、テレビ番組などから、食品に関するさまざまな調査の依頼が舞い込みます。たとえば、ヤマイモやオクラなどネバネバ食品の謎についてです。多くの人が不思議に思う素朴な疑問に答えていくことも、研究者の役割だと考えています。また、こうした機会を多く持つことで、ネバネバ食品の文化を継承できればと思っています。
■チャレンジ精神を大切にしてほしい
学問的なことは、大学に入ってからでも十分に身に付けることができます。中学・高校時代に大切にしてほしいのは、チャレンジ精神です。現代社会は、ものすごいスピードでIT化、グローバル化が進展していますが、ネバネバ食品のように、いまだにわからないことがたくさんあるのです。科学の世界では、僕らの時代の教科書と今の学生の教科書とではまったく違います。そのため、さまざまなことに疑問を持ち、調べてみる、先生に聞いてみるなどして、学びにつなげてほしいと思います。
未知なる分野を開拓するためには、挫折や失敗はつきものです。しかし、挫折や失敗を恐れないでほしいですね。失敗して初めてわかることもあるし、新たなおもしろさに出合うこともあるでしょう。
このようなチャレンジ精神は、勉強や研究だけでなく、社会に出た時も非常に大切な財産になるはずです。私にとってはヤマイモ研究がチャレンジの始まりになりました。皆さんも打ち込める何かを、ぜひ見つけてほしいですね。