国語への苦手意識が強いため、問題を読むまえから諦めてしまいます[中学受験合格言コラム]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。

※小泉さんへのご質問は、不定期にBenesse教育情報サイトメンバー向けのメールマガジン「教育情報サイト通信」で募集をいたします(随時の受付は行っておりません)。


【質問】

国語の物語や説明文はもちろん、問題すら読むこともできていません。国語への苦手意識が強いため、問題に取りかかる前にあきらめてしまうことがあります。どのようにしたら苦手意識を克服することができるでしょうか?

相談者:小4男子(大ざっぱなタイプ)のお母さま



【小泉先生のアドバイス】


やさしめの問題や問いから始めて、自信を付けさせる


●強い気持ちがなければ文章を理解することはできない。
「読書百偏(ひゃっぺん)意(い)おのずから通(つう)ず」という言葉があります。意味は、「どんな書物でも、何回も繰り返し読めば、そこに書かれている意味が自然にわかる」ということです。なんともすさまじい執念のようなものを感じますが、たしかに1つの真理がこの言葉の中にはあるように思います。

文章を読むという行為は、一つひとつの文字が目から入ってきて、スラスラと意味が組み立てられ理解されるというものばかりではないでしょう。文章が読み手にとって理解しやすいものであったとしても、頭の中では試行錯誤が起こっているはずです。また、一つひとつの文字を認識し、そこに意味を見いだし、前に読んだ部分との整合性を確認し、さらには先の展開を予想するという膨大な量の仕事を、読んでいる最中に我々は行っているはずです。そして、もし読んでいるものが難解であれば、作業はさらに複雑になるでしょう。

筆者の言いたいことはなかなか特定できず、複数の仮定を引きずりながら、最後の一文にたどり着くまで、不安になりながらも集中力をたやすくことなく文章に向かっていかねばなりません。まさに、読んで意味をとらえようとする強い気持ちがなければ、文章を理解することはできないのです。

●読み手に自信を持たせることが必要。
さて、こうした姿勢は小学生の皆さんにも必要です。もちろん、「読書百遍意おのずから通ず」までの必死さは難しいでしょうが、「自分なら読める」「なんとか読んでやる」という程度の気持ちは必要でしょう。
そうした気持ちを持っているか否かによって、同じ程度の読解力を持っていたとしても、ずいぶん結果が違ってくることでしょう。なぜなら、中学受験の問題文の中にはかなり難解なものもあり、そもそも完全には内容が理解できないようなものもあるからです。

しかし、完璧に理解できなくても、ある程度全体を理解できれば、なんとか答えられる問いも少なくありません。すなわち、「不屈の精神」で最後まで読み終えて6~7割がた内容がわかった子どもは問題に答えて合格点をとれますが、途中でめげてしまい何の話かあまりわからない子どもは、当然、点数的に低くならざるを得ないということです。読んでやるという意志、読めるのではないかという自信はそれほど大きな役割を果たすのです。しかも読み手はまだまだ経験の浅い小学生です。自信を持ってがんばれる人と、自信がなくてすぐ諦めてしまう人の差は非常に大きくなると思います。ですから、どうしても読み手に自信を持たせることが必要になるのです。

●どうしたら自信を付けられるのか。
それでは、どうしたら自信を付けられるのでしょうか。それは、実際に読めた、問題が解けたという成功体験を積み重ねることが大切だと思います。そのためには、徐々に難易度を上げていって、自信を持たせることです。

一般的に、小学生は説明的文章よりは物語文が、長い文章よりは短い文章が取り組みやすいでしょう。また、設問については、記述問題や抜き出し問題よりは選択肢問題のほうが得意だと思います。ですから、まずは短めの物語文を読ませて、選択肢問題で内容の理解を問うような問題をやらせてみるとよいでしょう。お子さまは現在4年生ですから、問題によっては少し複雑な人間関係のものもあるでしょうが、最初のうちはできるだけ単純なものを選ぶか、場合によっては学年が1つ下のものをしばらくやらせて、慣れさせるのもよいと思います。

なお、問題文だけではなく、選択肢問題の選択肢のほうも注意して読ませるようにしましょう。選択肢によっては、かなり紛らわしく表現しているものもあります。

●自信は、絶え間ない訓練から出てくる。
それからもう1つ。自信のなさは、語彙(ごい)力の不足からきている場合もあるので注意しましょう。言葉の意味がわからない、または読み方さえ知らない言葉が多く出てくるようでは、自信を持って読み進めることはできません。万一、語彙力が不足している場合は、漢字や熟語あるいは慣用句の勉強を強化してください。B4サイズの問題用紙の中で、4個以上の知らない言葉(かつ注がないもの)が出てきたら、それは語彙不足の可能性があります。

また、復習も徹底しましょう。問題文の内容は自分の読み取ったものでよかったかどうかを確認しましょう。さらに、問題については正解・不正解にかかわらず、模範解答をじっくり読みながら、正解の導き方を他の人に説明できるくらいまで理解させましょう。そのようにして、問題文を少しずつ長く難しいものにしていけば、あるいは問題も記述問題を含めたものをこなしていけば、少しずつでも自信を持てるようになってくることでしょう。

自信は、絶え間ない訓練から出てくるものです。よく言われることですが、練習でできないことが本番でできるわけはありません。普段の家庭学習でできていることだから、テストの時でも自信を持って取り組むことができるようになるのだと思います。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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