若者よ、小説を読め! 教育のプロが現代の風潮を斬る

若者よ、小説を読め! 教育のプロが現代の風潮を斬る「以前は、説明文より物語文のほうが点を取れる子が多かったが、最近は逆になってきている。主人公や登場人物の心情把握が苦手な子どもが増えている」。このような現状を国語の教師が、安田教育研究所の安田理氏に話したという。このことから懸念される現在の風潮と、今だからこそ子どもに読んでほしい本について、安田氏に伺った。

 

***

 

バスの中で経験したことです。運転手さんがなかなか中扉を閉めず発車しないので、おかしいな? と思っていると、一人の会社員風の女性が降りて行きました。すると、歩行器を車内に運び上げ、次にはお年寄りの腕を抱えてバスに乗せてあげました。お年寄りが歩行器をステップに上げられずにいたために発車できなかったのです。この時、降車口には女子高生がいました。スマホを見ていたにせよ、当然お年寄りの姿は視野に入っていたはずですが、手を貸そうとはしませんでした。

 

これは一例ですが、余計なことにはかかわりたくない、面倒に巻き込まれるのはごめんだ……こんな風潮が広がっているように感じます。無関心であるから、当然他人の生活、感情、人生などを想像することができません。

 

また、日本の成年男子の多くは、「小」説とバカにして小説を読みません。ですが、政治家や官僚や企業経営者が、自分の属する階層、組織のことしか考えなかったら、数字でしか人間を把握しなかったら、社会は動物界と同じような「弱肉強食」の世界になってしまいます。

 

小説はフィクションではありますが、そこに描かれていることは何らかの現実の反映です。自分とは接点のない世界、そうした世界に生きる人々についても想像を巡らせることができるように、子どもにも大人にも小説を読んでほしいものです。

 

出典:「小説」を読ませて[高校受験] -ベネッセ教育情報サイト

子育て・教育Q&A