首都圏で「学力を伸ばしてくれる学校」が多い地域は?[中学受験]
■首都圏で「学力を伸ばしてくれる学校」が多い地域は?
中高一貫校では、6年間にどれだけ学力を伸ばせるのか、ということが受験情報誌などでも注目されている。情報誌では、中学入試を入り口、大学合格実績を出口として、6年間の差を学力の伸びとして測定しているが、これには問題点も多い。昨年、森上教育研究所では、これまでに行われてきた測定方法の大きな問題点を解消できる測定方法を開発し、「学力を伸ばしてくれる学校」として、表とグラフを発表した。
しかし、昨年開発した表とグラフにもまだ問題点があったので、今年の表とグラフで修正をした。たとえば、昨年、卒業生が極端に少ない学校で「学力を伸ばしてくれる学校」の上位となった学校があったが、今年は大幅に順位を落とし、データの精度を欠くことがわかった。そこで、卒業生50名未満の学校は除外した。また、昨年は除外した付属校を、付属大学進学者を除く卒業生が50名以上であればデータとして採用した。
「学力を伸ばしてくれる学校」が、どの地域に集中しているのか、または分散しているのかは大きな問題だ。中学入試の偏差値別に分析すると、どの偏差値範囲にも「学力を伸ばしてくれる学校」があり、学力にかかわらず、受験生は「学力を伸ばしてくれる学校」を志望校として選定することができる。しかし、考えてみれば、受験生が狙える偏差値の学校が「学力を伸ばしてくれる学校」であっても通学できなければ意味がない。志望校選定では、学校の偏差値と通学時間が、受験校を限定する要素となる。
下の表は、学校所在地別に、学力の伸び別の学校数を集計したものである。学力の伸びは、入り口を首都圏模試の2007年中学入試偏差値、出口を2013年大学合格実績(早慶上智大)として、その差で計算した。対象となる学校は、首都圏模試の中学入試偏差値45以上の女子校・共学校とした。
学校の所在地は、首都圏を埼玉・千葉・神奈川・東京に分類した。この学校の所在地ごとに学力の伸びを6段階で分類すると、所在地によって大きな差が見られた。表を見ると、偏差値を5ポイント以上の学校に相当する大学実績を上げた学校が全体の12%、15校ある。大学合格実績は、入学した生徒の質で左右されるといってもよいくらいで、偏差値が5ポイント以上伸びるほどの実績を残せたということは、すなわち生徒全員が中学入試で1ランク上の学校に入学したようなものである。偏差値が5も上の学校に合格させることの難しさは受験生・保護者にはよくわかると思う。
6年間での伸びが偏差値2以上5未満相当の学校も、「学力を伸ばしてくれる学校」として多少は評価されるべきだと思う。偏差値2以上5未満相当の学校に偏差値5相当以上学力を伸ばした学校を加えた「2以上伸ばした学校」の割合を見ると東京と神奈川は40%程度で、千葉・埼玉とは大きな差があることがわかる。
また、偏差値5相当以上伸ばした「学力を伸ばしてくれる学校」は、埼玉・千葉・神奈川にはほとんどないが、東京には12校もある。東京には顕著に学力を伸ばしてくれる学校が多いので、受験生が越境して受験する理由となっていることが推察できる。しかし、東京の学校に通学可能な受験生ばかりではない。それゆえ、埼玉・千葉・神奈川では「学力を伸ばしてくれる学校」は希少価値なので人気が集中しやすいのである。