子どもの主体性は家庭の日常生活で育む意識を、と専門家
日本の大学とアメリカの大学では、入学試験に大きな違いがある。その違いを見ることで、日本の子育てに不足するものを探ることができる、というのは、安田教育研究所の安田理氏。何が不足しているのか話を聞いた。
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日本の大学とアメリカの大学の入試の決定的な違いは、日本のほとんどの大学がペーパーテストの結果で決まるのに対し、アメリカの大学は学力以外に、本人の属性や校内での活動、校外での活動も選抜の判断材料にする点です。意図は、本人が活動に積極的に、かつ主体的に取り組んできたかどうかを見る点にあります。主体的姿勢でリーダーシップを取れるタイプかどうかが重要視されているのです。
履歴書にも大きな違いがあります。日本では通常、履歴書には職務や役職を書きます。しかし、アメリカではポストではなく、実際の場面での主体的に行動できる人物であるかどうかが問われます。
これからの社会は、すぐ隣に外国の人がいる状況でしょう。生産拠点が海外に移れば、日本人も否応なく海外に出ざるを得なくなると思います。誰かに指示されるのを待っていては、コミュニケーションが取れません。自分から話す、自分から動く、そうした主体的姿勢が欠かせないのです。
「グローバル社会」というとすぐに、「英語が話せる」「専門的な知識や技術を持っている」などということがいわれます。確かに両方とも必要ですが、これだけではやっていけません。異なる背景を持つ世界中の人と議論し、競争し、協力し合いながら仕事を進めていく力、生きていく力が求められます。その前提となるのが、「自分の頭で粘り強く考える力」と「相手に伝わるように説明できる表現力」です。これらは普段から、本人に考えさせ、意見を言わせ、判断を委ねることの積み重ねがなければ身に付かないものです。
たとえ受験期であっても、保護者が手を差し伸べるばかりでなく、子どもが主体的に行動できるよう、家庭の日常生活でも意識的してほしいと思います。