どこから手を付ければいいかわからなくなっている[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小5男子(性格:大ざっぱなタイプ)のお母さま


質問

国語の問題文を読む時、字面だけ追っていて中身を理解できていません。選択肢から答えを選ぶ問題が苦手で、文章を理解したうえで選択肢を考えることができていない様子。答えを見たところで、文章自体を理解できていないので、納得・理解できていないようです。
算数は、基本の計算問題ができません。横で付きっきりで見ている時はそこそこできますが、学校・模試等を問わず、テストとなると計算ミスや書き写し間違いを連発します。途中式は合っているのに筆算で位取りを間違えたりしているので、割合や特殊算にも歯が立ちません。国語も算数も、どこから手を付ければいいかわからなくなっています。


小泉先生のアドバイス

国語の語彙(ごい)力や算数の計算力の強化をすぐに始めましょう。

国語にしても算数にしても、基礎・基本がしっかりできていないために、いくら積み上げていってもすぐに崩れてしまう状況のようです。保護者のかたとしてはどうしたらよいのか頭を抱えてしまいがちでしょうが、落ち着いて状況を分析してすぐに手を打つべきでしょう。

まず国語ですが、お子さまがどこでつまずいているかをチェックしてみましょう。やり方としては、塾などで使用しているテキストの問題文を、音読させてみてください。読み飛ばすことなく、しっかりと読めているかを確認します。

また、難しそうな熟語や慣用句の意味を説明させてみましょう。たとえば、B4で1枚程度の問題文を読んで、知らない言葉が3つ程度なら前後関係でなんとか文章を理解できると思います。しかし、未知の言葉が多いと、何が書いてあるのか理解するのはかなり難しいでしょう。未知の言葉とは、漢字や熟語だけではありません、慣用句やことわざなども含みます。慣用句とは「歯が立たない」のような表現ですが、保護者のかたからご覧になって、「こんな言葉を知らないの?」と思えるものもあるでしょう。しかし、未知の言葉が多いようなら嘆いてばかりいてはダメです。語彙を増やす勉強をすぐに始めてください。お子さまの場合、語彙力の不足が問題である可能性が高いと思います。

言葉を増やす勉強には、単語集を使うとよいでしょう。1日15分~20分程度、毎日勉強してください。3か月も勉強を続ければ、少しずつ成果が出てくるでしょう。また、日常の学習でわからない言葉が出てきたら辞書をひいて調べます。最初は辞書で知らない言葉をひくと、さらにわからない言葉が出てくるかもしれません。また、すべて調べようとするとかえって嫌になってしまうかもしれません。しかし、時間がある時だけでも辞書を活用してください。

次は、算数です。算数も基本である計算力に問題があるようです。算数は数字を使って問題を解く教科です。論理的で高度な思考力が必要な教科ですが、その大前提は計算力です。いくら発想が豊かでも、計算力がなければ答えには到達することは難しくなります。また、算数の力を高めるためには問題数をこなしていくことが必要です。そして、問題数をこなすには速く正確に計算できる能力が求められます。仮に、他の人の半分の計算力しかなければ、他の人の倍勉強する必要が出てきますが、実際にはそんなことはなかなかできません。恐らく、時間がたてばたつほど、実力の差が大きくなってしまうでしょう。

ですから、お子さまが算数に関して今やるべきことは、なんといっても計算力を身に付けることです。単元の勉強も大切ですが、それ以上に四則計算を確実に、しかもある程度の速さでできる力を付けましょう。勉強の方法としては漢字と同じで、計算ドリルを1日15分程度、毎日行うことです。今の自分の実力に合ったレベルから始めて、計算の工夫が必要な問題や複雑な問題までを徐々にこなしていってください。これも最初はつらいかもしれませんが、どうしても乗りきらなくてはならない課題です。

国語における語彙力や算数における計算力は、国語や算数の基礎であり、基本です。また、国語力は理科や社会の学習の基本でもあります。ですから、これらの基礎・基本ができていないとすべての教科に影響してきます。さらに、これは中学受験だけの問題にはとどまりません。中学校に入ってからの学習も、語彙力や計算力が身に付いていることが前提です。今、この時期にこれらの勉強をしっかりしないと、今後ずっと困ることになりかねません。それくらい大切な学習ですから、お子さまにしっかりとお話しして、基礎・基本の強化をすぐに始めましょう。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

子育て・教育Q&A