国公立校に対する不況の影響[中学受験]

図1は首都圏の国公立校を所在地別に、受験者数前年対比の推移を表としてまとめたものだ。これを見て、まず気が付くことは、東京は、受験者数前年対比が100%を越える年と10%以上激減する年が交互となり、隔年現象を起こしているようだ。東京には国公立校が多く、受験者数も多いため、合計でも隔年現象が見られる。



隔年現象とは、受験者数が多くなって難化した次の年は、難化したことを嫌い、受験者数が減少して易化し、その次の年は易化したことで人気となって受験者数が増えることをくり返す現象だ。これは、人気のある学校によくある現象で、国公立校は人気が高いといえる。

神奈川では2012年、公立中高一貫校として「横浜市立南高等学校附属中学校」が新設され、他の国公立校も注目されたせいか、のきなみ受験者数が増えた。もちろん、「横浜市立南高等学校附属中学校」の前年の受験者数がないので集計には入っていない。今年は、「横浜市立南高等学校附属中学校」は開校2年目なので、集計に入っているが、開校2年目は受験者数が減少する傾向があり、実際、受験者数前年対比は89.6%であった。

隔年現象で、その他の学校でも受験者数前年対比100%を下回ったところが多く、神奈川全体では10%以上前年対比を下回った。神奈川以外の茨城・千葉・埼玉の国公立校の2013年と2012年の受験者数前年対比を見ると、2年連続して受験者数が激減している。

国公立校は学費が安いため不況の影響は受けず、私立校とは逆に、受験者数が増える傾向になりそうなものだが、それほど増加しているようには見えない。国公立校の受験者数が減少する原因として合格倍率が高すぎることが考えられる。

たとえば、東京の公立中高一貫校の合格倍率は、学校にもよるが、一般的には開校1年目の合格倍率は非常に高いが、開校2年目で下がり始め、3年目に約6倍程度まで下がって安定する。やはり最初の年は、期待感と珍しさで受験者が多いが、冷静になって考えると合格倍率が10倍を超えるようなところに合格するには困難と考えるようで、せいぜい6倍が限度となるのだろう。神奈川も、この傾向はあるが、茨城・千葉・埼玉では合格倍率が6倍以上の学校は1校しかない。



図2は、2009年を100%とした時の2013年の受験者数増減率だ。これを見ると、首都圏の国公立校が4年間にどれだけ受験者数が増減したかがわかる。合計では、私立校が80.4%で国公立校は80.1%とほぼ同じで、20%も受験者数が減少したことになる。やはり、国公立校も私立校と同様、受験者数は減少傾向にある。

しかし、受験者数が減少した原因が異なることが興味深い。私立校にとって不況は受験者数を減少させる要因だが、国公立校にとって不況は受験者数を増加させる要因となっている。また、合格倍率が高い国公立校は受験者数を減少させているが、私立校は全体的に受験者数が減少して合格倍率が低くなっていても受験者数は下がり続けている。



●表示:受験者数が比較的多い:前年対比(前年対比が100%以上)、
※増減率(2013/2009が90%以上)
受験者数が比較的少ない:前年対比(前年対比が90%未満)、
※増減率(2013/2009が70%未満)
参考データ(受験者数1,000名未満のため)…斜体で表示


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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