私立と公立、どう違う? (大学合格実績)[中学受験]

私立中高一貫校(以降「私立」と称す)と公立中高一貫校(以降「公立」と称す)の大学合格実績を比較しようと、首都圏の「公立」を調べた。比較するためには開校してから6年以上過ぎていて卒業生を出している学校でなければならないが、首都圏で卒業生を出している「公立」は東京都の5校しかなかった。

「公立」の大学合格実績を分析する時には、同じ条件の「私立」と比べなければ意味がない。そこで、これまでの分析と同様、同じ東京都の共学の進学校で、中学入試の偏差値が「公立」と同等の「私立」の大学合格実績と比較分析することで、教育の中身の違いを分析してみよう。
「公立」の各校の偏差値は56~62で、その範囲に該当する「私立」を選択し、偏差値の平均が同じ程度になるようにした。「私立」は下記7校で、2006年の首都圏模試の平均偏差値は58.1で、下記5校の「公立」の平均偏差値は58.0とほぼ同じになった。「私立」の7校は、上記の条件で選び、「公立」と数を合わせるためにその他の条件で絞り込んだわけではない。
 
表1の(2)2012年 卒業生100人当たりの東大~東工大合格者数(人)を見てみよう。「私立」の平均は3.0で「公立」の平均は4.0となっている。卒業生100人当たりの東大・京大・一橋大・東工大合格者数は、同じ偏差値では、公立のほうが多く、優れた合格実績である。
しかし、表2の(2)2012年 卒業生100人当たりの早慶上智合格者数(人)では「私立」の平均は44.5で「公立」の平均は35.4と逆転している。筑駒や開成のように東大を主として受験対象としている学校を除けば、偏差値56~62の学校は、難関国立大の合格実績が多い学校は難関私立大の実績も多い傾向があるが、「私立」は難関私立大、「公立」は難関国立大に強いという特性があるようだ。もちろん、「私立」や「公立」の中でも個々の学校では、難関国立大や難関私立大に強い学校もあるので、注意されたい。

表1の(3)を見ると、「私立」の平均は57.4で「公立」の平均は59.7となっている。(3)は、(2)の大学合格数から換算した標準的な2006年首都圏模試の結果偏差値で、(4)は入学時と卒業時の学力の差を計算したものだ。難関国立大については他校よりも「公立」のほうが学力を伸ばしている学校が多い。
表2の(4)を見ると「難関私立大については他校よりも「私立」のほうが学力を伸ばしている学校が多いことがわかる。
ここで、特筆すべきは、表1の(4)の「公立」が平均で1.7もあることだ。受験に直結する5教科の授業時間が「私立」に比べて少ない中で、偏差値を平均1.7も学力を伸ばした教育は評価すべきだ(個々の学校で見ると「桜修館」は(4)が4.6もある)。



教育内容 授業時間数詳細
   「学力を伸ばしてくれる学校」 私立中高一貫校と公立中高一貫校の比較 1



   「学力を伸ばしてくれる学校」 私立中高一貫校と公立中高一貫校の比較 2


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

子育て・教育Q&A