2012年度入試問題 学校別分析3 【武蔵中、駒場東邦中、栄光学園中】[2012年度入試で何が問われたか<理科> 首都圏上位10校の問題を徹底分析 第3回]
首都圏主要10校の2012年度入試問題の分析結果をもとにして、Tサイエンス主宰の恒成国雄先生に、理科入試の出題傾向と今後の対策について解説していただきました。
※以下は、2012年4月に開催された森上教育研究所主催「わが子が伸びる親の『技』研究会」セミナーでの恒成先生の講演を抄録したものです。
※首都圏主要10校として、雙葉中、女子学院中、フェリス女学院中、桜蔭中、武蔵中、駒場東邦中、栄光学園中、麻布中、筑波大学附属駒場中、開成中を分析対象校としました。
2012年度入試問題を振り返る<理科> 学校別分析3 【武蔵中、駒場東邦中、栄光学園中】
今回から男子校を取り上げて分析します。
まず武蔵中、駒場東邦中、栄光学園中の3校です。
武蔵中
2011年度は「多少差が付くかな?」という難易度の問題でしたが、2012年は例年どおり「差が付きにくい」問題に戻りました。武蔵中らしい問題でした。
大問1は生物分野の「植物」の問題です。問1~3は非常に簡単です。問4の「気体検知管」は、雙葉中でも出題されました。2012年度のはやりのようです。
大問2は化学分野の「燃焼」ロウソクの問題です。これが「合否を分けた1題」です。じっくり問題文を読み、図を見て考えればそれほど難しくはありません。武蔵中の伝統的な理科らしい問題です。
大問3は恒例の「袋問題」です。毎年袋の中に簡単な道具が入っており、それについて気が付いたことを書く問題です。2012年度は「折れ曲がるストロー」でした。単純なものほど難しいです。「何を書けばよいか?」と悩む前に、まず図を描いてみましょう。図を描いている間に必ず何かに気付くはずです。また、何度も何度もしつこく手で触れている間に今まで気付かなかったことにも気付くはずです。それを一気に答案に書きましょう。
武蔵中の理科の出題範囲は、4年生の段階でほぼ学習を完了してしまう程度のものです。この学校に合格したければ、合格者平均と不合格者平均で約20点以上の得点差が付く算数をしっかりとがんばってもらいたいと思います。反対に、理科・社会がどうしても苦手である受験生には、苦手をカバーできるこの学校をおすすめします。理科・社会を苦手とする受験生にとってはよい学校です。
なお、理科の対策として入試前の1月にあわせて10時間くらいの「袋問題」の練習をして免疫をつけておくといいでしょう。
合格に必要な得点率は65%です。
駒場東邦中
駒場東邦中の理科は、数年周期で生物分野に、非常に難しいビックリするような問題が出ますが、2012年度は無難な問題構成でした。いろいろ傾向が変わりましたが、本来の受験生のレベルを考えた「以前の」駒場東邦中の問題に戻ってきました。
大問1は単問の総合問題でした。ここで差が付きます。「合否を分けた1題」です。大問1をしっかり正解できると、落ち着いて4分野に分かれている大問2以降に進めます。(4)はおもしろい、加速度の問題ですが、小学生には難しいでしょう。ここは落としてもかまいません。
大問2は地学分野の「地層」の問題です。地層の逆転に注意しましょう。
大問3は物理分野の「ふりこ」の問題です。ふりこの周期の測定実験は経験しておきたいところです。
大問4は生物分野の「植物」です。今年度の生物はおもしろい問題でした。問題文中の植物名等を知らなくても、問題を順番に解いていくことで勉強になる問題です。
大問5は化学分野の「熱」の問題でした。問題文からも判断できますが、空気のほうが水よりも熱ぼう張が大きいことが頭に入っていれば、あせらずに解くことができるでしょう。
2012年度の理科は、得意な受験生は差をつけることができたと思います。駒場東邦中が第一志望のお子さまは、理科で差が付けられるようにオールマイティーな一般教養と思考力をつけていきましょう。努力が得点に結び付くはずです。
合格に必要な得点率は70%です。
栄光学園中
栄光学園中の理科の問題の特徴は、何といってもグラフです。必ずグラフを描かせます。配点も高いと思われます。もう一つの特徴は、1分野のみから出題されることです。2007年度は生物(ソメイヨシノ)だけ、2008年度は物理(モーターと乾電池)だけ、2009年度は地学(火山)だけ、2010年度は植物・物理(イネ・ごはん)だけ、2011年度は、水時計に関する内容だけでした。しかし、2012年度は久しぶりに大問1と大問2が関係していない問題が出ました。
大問1は生物分野の「植物」の問題です。2012年度に頻出した「緑のカーテン」が出題されています。節電の夏ということで2012年度はいろいろな学校で「緑のカーテン」についての出題がありましたが、それをかんがみると2013年度は、やはり「日食(金環日食)」が出題される可能性は高いでしょう。
勝負は大問2の物理分野の「熱」の問題で、「合否を分けた1題」といえます。問4のグラフは難問です。計算をしてその結果をグラフに描かなければいけないというややこしい問題になっています。そして問6はそれ以上に難問になっており、かなりの計算力がないと正解までたどり着けないと思います。
2012年度の問題は難しかったと思います。簡単な問題と難しい問題の格差が大きいので、差が付きにくかったのではないでしょうか。やはり勝負は「グラフ」だったと思います。
合格に必要な得点率は65%です。
各中学校の入試問題はこちらでご確認ください | ||
武蔵中学校 10年間入試と研究 平成25年度用中学受験 16 | 駒場東邦中学校 10年間入試と研究 平成25年度用中学受験 4 | 栄光学園中学校 10年間入試と研究 平成25年度用中学受験 301 |