一言一句、模範解答のようにならないと気が済まない[中学受験合格言コラム]

「一言一句、模範解答のようにならないと気が済まない」

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


※小泉さんへのご質問は、不定期にBenesse教育情報サイトメンバー向けのメールマガジン「教育情報サイト通信」で募集をいたします(随時の受付は行っておりません)。


質問者

相談者:小5女子(性格:神経質・論理的)のお母さま


質問

自分の書いた答えと、「答えの本」の答えが違うと、たとえ主旨は合っていても、一言一句、模範解答のようにならないと気が済まないらしく、いくら「合っているよ」と言っても、消して(もしくは赤ペンで)、書き直してしまう。明らかに、必要ないことに時間をとられているので、見ていてイライラすることも多い。


小泉先生のアドバイス

やるべき学習内容の「全体」と、それに費やせる「時間」を十分知らせる

「一言一句、模範解答のようにならないと気が済まない」というのは、「神経質なタイプ」の生徒さんによく見受けられます。このタイプは、とても真面目で勉強熱心であり、自分がすべきことをきっちり終わらせることに意義を感じます。完璧になるようにじっくりやりたいので、短い時間しか与えられないとイライラすることが多く、また複数のことを同時並行的に行うことが苦手です。たとえば、「音楽を聴きながら勉強」などという器用なことは、苦手なタイプと言えるでしょう。

この「神経質なタイプ」の欠点は、「完璧さ」を求めるあまり、他にやるべきことがあってもそれらを無視しやすいことにあります。たとえば、自分の机の上はそれこそ髪の毛一本も落ちていないほどきれいに整頓されているのに、机のまわりはゴミだらけというようなことです。つまり、机の上を完全に整頓するために、机のまわりをきれいにする時間がとれないと、机のまわりの乱雑さは「無いもの」として無視してしまうという悪いクセがあるのです。整理整頓も「特定の場所だけ」では困りますが、中学受験でもそれは同じです。最終的に求められているのは総合成績が合格者最低点を上回るかどうかであり、教科間のバランスが非常に重要です。一つひとつ完璧に仕上げていきたい気持ちは誰にもありますが、時間は有限ですから、バランスのとれた効率的な学習が求められます。

さて、それでは真面目で神経質な生徒さんはどのように指導すれば良いでしょうか。ひとつの方法としては、自分のやるべき学習内容の「全体」と、それに費やせる「時間」を十分知らせることです。「論理的なタイプ」の生徒さんには特に有効だと思いますが、全体の学習内容を把握することで、今何を、どのくらいやるべきかを自分自身で納得させることです。やるべき学習内容の全体像と残された時間がわからないと、神経質な生徒さんは、自分の目の前にある課題を、それこそ完璧に仕上げようとします。根が真面目ですから、「そこまでしなくても」と言われても、そうしたほうが「気持ちが良い」のです。

全体像を伝える時は、漠然と「他にやることがある」と言ってもなかなか伝わりません。できるだけ具体的に、たとえば「算数はこの本を1冊、国語はこの本を1冊、2か月で仕上げる」というように、学習すべき具体的な内容と量、さらに費やす時間をさし示す必要があります。しかも、ある程度前もって、打ち合わせを十分に行い、納得させてから勉強を始めさせましょう。本人にとっては、おそらくとても気分の悪い勉強方法だとは思います。極端に言えば、シャツを前後さかさまに着てしまった時のような感じかもしれません。しかし、何かを成功させるためには、バランスが非常に大切であることを学ばなければならないのです。そして、「完璧」というのはなかなか難しいことや、「こうでなければならない」ことというのは現実には案外少ないことを理解すべきでしょう。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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