大学での就活を考慮した志望校の選定 [中学受験]

受験生・保護者は、今後大学での就活を考慮して中学入試にのぞむことが予想される。というのも、中高一貫教育に対するニーズが、「難関大学に合格する学力を付けること」から「一流企業に入社できる能力と人柄を身に付けること」に変わりつつあるようにも感じるからだ。
実際には、保護者は、学力と人間力(人柄と能力)の両方を重視すると思うが、現状は学力だけが重視されており、中学入試における学校の偏差値は、大学合格実績と比例していると言っても良い。これまでの学力のみを重視する傾向がおかしかったのではないか? 大学受験と同様に企業への就職が実利となって、今後、中高で人間教育は脚光を浴びる可能性がある。もちろん、これまでの人間教育ではなく、就活に強いという実利ということになる。

人間教育を打ち出している学校の学校案内を見ても、人間性(人材要素の名称としては「人柄」)をどのように向上させるのか、また、就職のときに「強み」として示すべき能力をどのように身に付けさせるか、を明記しているものは少ない。それらの学校では、朝礼や主だった行事の中で、主として校長先生がお話しになる訓話で、人間性や能力を理解させる教育を行っていると思うが、それだけではなかなか身に付かないはずだ。やはり、具体的な指導を、行事やクラブ活動・生徒会活動などで受け、時間をかけて身に付けていくものだろう。もちろん、普段の授業など、生徒と先生が接するあらゆる機会を捉えて指導すべきだが、テーマを決めて能力や人間性の向上を図ることは、行事で行うと効果が高い。しかし、多くの学校は、校長先生からの訓話だけで終始し、能力や人間性の向上のための指導は行われていないのが現状だ。
学校案内で行事の箇所を読むと、何のためにその行事を行っているのか、おぼろげな目的ではなく、生徒の「能力や人間性の向上」を目標として書かれているものが少ないことでもわかると思う。生徒に何かを感じてもらうため、何かを学んでもらうため、というような抽象的な行事の目的では、生徒が吸収できる内容は少なくなる。

行事を行う前に、先生は、この行事で「何を感じてもらいたいか」「何を学んでもらいたいか」という目的を明確にし、生徒が自分ではどの程度の「能力や人間性」を身に付けており、この行事でどの程度まで引き上げるか、そして、そのためには行事の何に取り組むかを理解しなければ、せっかくの行事が無駄になる。そうでなくとも、学校行事は生徒を楽しませる内容が多く、指導する内容が減少する傾向にある。
生徒が、楽しいという行事に反対ではない。行事が少なくとも生徒が興味を示す内容にしなければ、生徒は積極的に行事に取り組まなくなり、生徒が「能力や人間性」を身に付けられる可能性も少なくなる。生徒が興味を示し、「能力や人間性」を身に付けるための指導を綿密に盛り込んだ行事を企画・実施している学校には注目したい。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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