転塾を考えるときの注意点[中学受験]

今回は、5年生以下のお子さんを抱える保護者が、この時期に考える転塾についてお話しようと思う。塾のカリキュラムがこの時期で切り替えとなるので、1月~2月は塾を替えるには良い時期で、転塾する場合はこの時期を逃すともう1年待つことになる。結論から述べると、「転塾をしたほうが良い」という結果が、すでに中学受験を終えた保護者のアンケートから分析されている。アンケートの分析結果を見ると約30%が転塾した経験があり、その約70%が転塾して良かったと考えているのだ。しかし、ここで注意すべきは残りの約30%が転塾で失敗していることで、闇雲に転塾することは危険が伴うのだ。

まず、転塾を保護者が考える原因は何かということだが、ほとんどの場合が「塾の授業がわからない」と「成績が上がらない」である。授業がわからなければ子どもの成績が上がらないのは当たり前だが、授業がわからないのは塾だけの原因ではないかもしれない。もちろん、子どもが塾の指導法に合っていないことが考えられる。1クラスの生徒数が多くカリキュラムが早く進んでいる大規模の塾から、1クラスの生徒数が少なく生徒一人ひとりに目が行き届く小中規模の塾に移れば、子どもは授業がより良く理解できるのではないかと考える保護者が多い。塾のシステムと本人とが合っていないように感じているのが原因だ。

そのような場合、期待できるメリットとして、転塾先の塾が生徒一人ひとりに目が行き届く指導をしてくれて、成績が伸びることが考えられる。しかし、これは期待だけに終わってしまう可能性もある。保護者は、転塾することでメリットだけを考えがちだが、デメリットも当然ある。
デメリットとして最も大きいのは、転塾した塾と現在通っている塾のカリキュラム・教材が異なることだ。カリキュラムが違えば、当然だが、習っていない分野・単元が出てしまう可能性がある。また、教材が変われば、これまでの教材とリンクしていないので学習しにくくなる。その他にも、転塾した塾の学習環境に慣れるまでの時間を浪費することが考えられる。また、転塾した塾で友達ができない可能性もあり、それが原因で学習意欲が低下するリスクもあるだろう。もともと、従来と違うことを行えばリスクは多いのが常だが、デメリットは、考え出したらこの他にもたくさんあると思う。

しかし、これだけのリスクがあっても、前向きに転塾するのであれば、成功する確率は高い。実際に70%は成功したと回答しているわけだから、数字を見る限りでは、転塾を奨励しても良いくらいだが、どのような場合に成功する確率が高いかを考えるべきだろう。
アンケートの記述にそのヒントがあった。一部の保護者の声かもしれないが、転塾が成功するかどうかは、転塾してでも成績を伸ばしたいという子どもの気持ちがあるかどうかがポイントとなるのではないだろうか。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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