要点をつかむ何か良い方法はないでしょうか[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小6女子のお母さま


質問

文学的文章の長文読解が苦手です。本文を読まないうちに問題を解きたがります。「この物語で作者は何を伝えたかったのかを、100文字以内で作文しなさい」などの問いに半分も答えられません。要点をつかむ何か良い方法はないでしょうか。読書はよくしますが、ファンタジー物が好きです。夏休みの課題図書なども読みます。


小泉先生のアドバイス

「出来事」の個所を探し、内容を「一言」にまとめる

物語の内容を大きくつかむためには、最初と最後で何が変わったかを考えれば良いというお話を以前したことがあります。変わるものは、「気持ち」か「人間関係」です。
たとえば、最初は友達だったA君とB君が、ささいなことでケンカになり口もきかなくなってしまいます。しかし、その後何らかの「出来事」が起こり二人は仲直りして、本当の意味での友人になるという物語があったとします。ここで変化しているのは二人の人間関係であり、その推移は+→−→+で表わせます。二人は前より仲良しになったのですから、最後の+は、最初の+にくらべて大きくなっています。この変化を図に表すと、下のようになります。


図


さて、ここで注目したいのは変化のきっかけになった「出来事」です。「出来事」を通じて登場人物の「意識」や「人間関係」が変化しますが、その時に登場人物が感じた、たとえば「勇気の大切さ」や「生きることの素晴らしさ」などを、読者も共有することになります。そして、それらが筆者の伝えたかったことでもあることが多いのです。

と言うことで、筆者が伝えたかったことをつかむためには、まずはこの「出来事」の個所を探します。その場所が見つかったら、それを表現するために、内容をギュッと絞って「勇気の大切さ」などと「一言」にまとめてみます。この一言にする作業が、最初はなかなか上手にできないとは思います。物語で展開されている具体的な内容を、より普遍的な言葉に言い換える作業なのですが、語彙(ごい)の少ない小学生にはやっかいなことでしょう。
最初のうちはお母さんの手伝いも必要かもしれませんが、焦点を「出来事」の個所に絞れただけでも大いに助かるとは思います。まずはその個所を読ませて、「これだ!」と思うことをどんどん言わせてみてください。「変なことを言ったら恥ずかしい」と尻込みさせてはいけません。「どんどん言って」「どんどん間違えて」、やがて正しい答えが導き出されることでしょう。

漢字の練習の時も、必ず手で書きながらの学習をすすめられると思います。おそらく、「言葉で言う」とか「手で書く」という動作は、人間の脳を活性化させるのに非常に有効なのだと思います。
お子さまが「言葉で言ってみる」、それに対してお母さんが「助言する」、それらを考えてお子さまが「別の言葉で言ってみる」、というやりとりがとても重要なのです。この試行錯誤が、お子さまの考える回路を構築し、考えをまとめるための語彙の増加を促していくと思います。何回か繰り返していくとコツがわかると思いますので、実践してみてください。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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