点数が不安定で、何から勉強の取り組みに手をつけたら良いのかわかりません[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小6女子(性格:わんぱく・強気タイプ)のお母さま


質問

本を読むのが好きな割に読解力や記述力が上がりません。本をきちんと理解して読んでいるのか、内容の理解なしに何を満足として本を読んでいるのかとても疑問です。また、点数の浮き沈みが激しく、上位の成績だったり、最下位だったりとまったく点数が安定しません。なので、何から勉強の取り組みに手をつけたら良いのかわかりません。


小泉先生のアドバイス

いままでの試験を振り返り、弱点の「仮説」を立てることから始める。

「何から手をつけたら良いのかわからない」というお悩みですが、そんな場合は、まず「何が問題なのか?」を具体的に考えることが大切です。たとえば今回の場合は、「点数の浮き沈みが非常に激しい」ということが問題です。上位の成績だったり最下位だったりという激しさでは、ご本人も自分の国語力について自信が持てないでしょう。まずは、点数が安定しない原因を探ることが何より重要だと思います。

原因究明のためには、今まで受けた試験の答案を分析するのが一番わかりやすいでしょう。分析して、「ここが弱点であろう」という仮説をいくつか立ててみましょう。この「仮説」を立てるという作業は非常に大切です。それは、悩みが解消しない最大の理由は、その悩みが「漠然としている」からなのです。「国語力がない」「読解力がない」などと悩んでいないで、「どこが」「どのように」弱いのか?そしてそれは「なぜ」なのか?ということをデータによって突きとめることが重要です。しかし、「これがその原因だ!」と思っても、本当にその通りかどうかはなかなか判明しないものです。ですから、「仮説」としてほかの可能性も常に頭のすみに置いておくべきでしょう。思い込みのために、本当の原因を見過ごさないための用心です。

さて、国語の弱点となり得るポイントはいくつもあると思いますが、大きく分けると1)熟語など語彙(ごい)力の不足、2)文法など基礎知識の不足、3)文種に関する苦手、4)問題文のテーマに関する苦手、5)設問に関する苦手……でしょう。今までのテストのでき・不できを確認して、これらの中で「ここかな?」というだいたいの目安を付けます。1、2回の試験ではわからないかもしれませんが、何枚もの答案を見ていくとだんだん弱点が絞られてきます。さらに、点数が良い時と極端に悪い時の差がどこにあるのかを調べることも重要です。たとえば、点数が悪い時は記述問題や抜き出し問題が多い、問題文のテーマが哲学的な場合が少なくないなど、弱点を特定するための良い材料になるでしょう。

自分自身と比べるほかに、ほかの生徒と比べることも効果的です。それには、問いごとの正答率がわかるようなデータが必要ですが、最近は解答解説などにそのようなデータが付いている試験も多くなっています。もし、そのようなデータがあれば有効に活用したいものです。使い方としては、たとえば、正答率が50%以上の設問でお子さまが間違えているものをピックアップし、それらの設問の中に何らかの共通点がないかを探し出します。これも一回ではなかなか見つけにくいとは思いますが、何回も調べていくと共通した弱点が浮き上がってくるものです。

ところで、こうした分析を混乱させるものに精神的な要因があります。たとえば、ある状況になるとあわててしまってパニックになり、とんでもない点数をとってしまうなどのケースです。小学生はそれぞれの成熟度がかなり違います。試験場で、気持ちが安定しない子どもも少なくありません。たとえば、試験場ではできないのに、家に帰って落ち着いてやるとスラスラとできるなどはそのようなケースと考えて良いでしょう。そのような場合は勉強方法というよりは、試験場における精神的なバランスの取り方や答案を仕上げる順番などの工夫により改善する場合があります。

さて、データ分析により原因がつかめ、正しい対処を行ったとしてもまだ安心はできません。なぜなら、はっきりとした結果が点数に現れるのは3か月程度かかるのが普通だからです。そして、その期間を我慢できずに幾度となく対策を変えると、せっかくの改善の芽を摘んでしまうことになります。この点は注意すべきでしょう。それからもう一つ。自分だけで分析していると、どうしても自信が持てない場合もあると思います。そんな時は、ほかの人の意見も参考にすると良いでしょう。たとえば、通っている塾に相談するのも良いでしょう。そんな時でも、自分なりの仮説を持っているかいないかでは、相談した結果が大きく違ってくるかもしれません。このように自分なりの仮説を立てることは、いずれにしても大切だと思います。さっそくいままでの試験を振り返り、弱点の「仮説」を立てることから始めてみてください。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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