理論立てて説明することが難しい[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小5男子(性格:論理的)のお母さま


質問

自分の意見を求められるような問いに対して、理論立てて説明することが難しいようです。


小泉先生のアドバイス

日常生活のなかで自分の意見を持つように練習していく

書いてある文章の内容をまとめたり、問いに答えたりというのが一般的な国語の試験です。そして、内容に対して自分の意見を述べさせるような問題が出題されたとしたら、かなり高級な問題だと言えるでしょう。それはまさに、大学受験でも出題される「小論文」です。しかも、筆者の主張に対して「賛成」するのではなく、「反対」の意見を述べさせるとしたらさらに難しい問題になります。
「大人の評論家、あるいはそれに類する著者が書いた論説文を読んで、小学生が自分の意見を、しかも反対意見を述べられるのか?」あるいは、「そんな高度な問題が、中学入試問題に出題されるのか?」と疑問を持たれるかたもいらっしゃると思います。しかし、今年(2010<平成22>年)の入試で、開成中学校が出題しました。参考までに、問いの一部を挙げておきますと、「問二 『……』と筆者は文章を結んでいますが、『自分』と『歴史』と『人生の充実』の関係について、この文章と異なる考え方もいくつか成り立ちます。そのひとつを自分なりに考えて述べなさい」というものでした。

さすがに開成は難しい問題を出題するとは思いますが、逆に言えば、今の日本の子どもたちに一番必要な学力ではないかとも思えます。ある意見や事柄について、自分なりの意見を持ち、しかも論理的にそれを説明できる力は、ずいぶん前からその必要性が叫ばれてきました。そのために、中学校や場合によっては小学校で「ディベート」の授業が行われてきたのだと思います。しかし、「以心伝心」や「不言実行」などの習慣が強いためか、なかなか自分の意見を言うことが難しいようです。あるいは、主張ができたとしても、ほかの人を納得させるような説明ができない子どもたちが多いのではないでしょうか。このような主張では、いわゆる自己中心的なわがままになってしまいかねません。

これからのグローバル社会に生きるためには、ほかの人を納得させるような、自分の意見を述べられる人間に成長していってもらいたいものです。そして、そのためには学校教育だけでなく、ご家庭での指導も大切であると思います。
ひとつの指導方法としては、ほかの人の意見やある事柄に対して、常に自分なりの意見を持つように習慣付けることです。たとえば物語を読んだあとでも、「面白かった」や「悲しかった」などの単なる感想ではなく、登場人物の言動や考え方に対して、どのように思うかを考えさせるようにするということです。すなわち、「賛成」または「反対」の意見を述べさせ、それに論理的な説明も付け加えるという練習をしていくのです。
論理的な思考が徐々にできるようになる年齢はお子さまによっても差はあると思いますが、4年生くらいから日常生活のなかで自分の意見を持つように練習していくと良いと思います。新聞を読んで、あるいはテレビを見て、または学校や家庭での出来事など、題材はそれこそ無限にあるでしょう。
この時に大切なことは、答えが一つとは限らないこと、あるいは答えがない場合もありうることを教えることです。それぞれの立場によってさまざまな意見があり、だからこそ対話を続ける必要があること、あるいは考え続ける必要があることが理解できれば、それが本当の学力だと思います。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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