2008年度入試で何が問われたか<国語>

難関国・私立中学受験指導に定評のある先生が、2008年度入試の出題傾向を分析してくださいました。
中学入試に欠かせない国語の力を伸ばすヒントが満載です。
6年生は直前期のポイント確認に、5年生以下は今後の傾向把握に、ぜひお役立てください。


首都圏100校の入試分析<国語>

首都圏100校の2008年度入試問題の分析結果を基に、親の時代とは変わりつつある国語入試の出題傾向と今後の対策について、平山入試研究所の小泉浩明先生にお話しいただきました。
(以下は、森上教育研究所主催「わが子が伸びる親の『技』研究会」セミナーでの各先生の講演を抄録したものです。)


2008年度 国語入試の特徴と対策

(1)記述問題数の増加

記述問題数を2007年度入試と比較し、その増減を集計してみると、ここ2年は記述問題の増加が目立ちます。特に、田園調布学園(2007年度5題→2008年度11題)や、慶應湘南藤沢(2007年度1題→2008年度6題)など、2008年度に受験した先輩たちは、出題傾向がこれまでと全くに違っていたことにビックリしたことでしょう。

記述対策には、3つのポイントがあります。まず1つ目は「基本型のマスター」です。
解答の基本型は、
(3)理由(キーワードの理由)+ (2)キーワード(問われていること)+ (1)「文末」(~気持ち、~だから、~こと など)
です。
これを、(1)(2)(3)の順に「まず文末、次にキーワード、最後に理由」と追っていきます。記述問題で問いに答えていない子が多く見られますが、まず文末に焦点を当てることで、解答のブレが解消できます。

キーワードは、小学生にとってはなかなかつかみづらく、見つけにくいものですが、問われていることと解答文字数のバランスを見て、どこまでを解答に含めるのかの見当をつけます。理由の部分は、字数制限で書けないなら削除しても大丈夫です。また、志望校のクセや字数制限・解答欄・解答スペースを考え、徹底的にマスターしましょう。出題数が多い学校の場合、本番の入試では記述問題にじっくり取り組んでいる時間はありませんが、答えを出すための範囲は狭いものです。処理能力が問われていますので、志望校の過去問を徹底してマスターし、得点できるようにしておきましょう。

(2)定番のテーマと新たな兆候

出題文をテーマ別に分類してみると、ベスト3は、「友人・友情」「父母子」「言語・コミュニケーション」でした。ベスト10までのテーマで、全体の70%以上の問題が網羅できます。1位~4位までのテーマだけでも全体の40%以上になりますので、上位だけでもしっかり勉強しておけばかなり有利になるはずです。

頻出で定番化しているテーマは「友人・友情」「父母子」で、出題が増加傾向にあるテーマは「言語・コミュニケーション」「動植物」「文化・習慣」「他者・大人」で、出題が減少傾向にあるテーマはランキング外ですが「考え方・思考」があります。

テーマ別頻出度

テーマというのは、大人にとっては常識であっても受験生にとっては未知のことです。例えば「友人・友情」の物語が出た場合に、「対等」「対等ではなかったが、イベントを経て対等になった」などの基礎知識、パターンとして、「あこがれ・いじめ」「ライバル・異性」「トラブル」などがあること、キーワードとしては「対等」「認め合う」「自分の居場所」などがあることを、おさえておくといいでしょう。頻出テーマについて、それぞれおさえておき、問題を読む場合は、「この文章のテーマは何か?」を常に考え「○○の話」など一文にできるようにしておきます。また、読む際には、自分の知識と比べながら読むことで「深読み」しすぎを防いでいきます。

(編集部より:出題文のテーマについての詳細は小泉浩明先生著『中学受験 必ず出てくる国語のテーマ』(ダイヤモンド社)をご参照ください。)

(3)頻出作家の減少

問題文で扱われる作家は近年多様化しています。3校以上に出題された作家は、2006年度入試で8名、2007年度入試で2名、2008年度入試で4名、2校以上に出題された作家は、2006年度入試では20名もいましたが、2007年度入試で18名、2008年度では10名となっています。
このような傾向の中で、頻出作家の作品を受験生に積極的に読ませる意義は薄れてきていると思われます。時間をねん出して無理して読ませるのではなく、少し読ませておもしろがったら続きを読ませるようにするといいでしょう。


2008年度の頻出作家と作品

(4)実践力の習得と志望校対策

基礎・基本知識を土台に、実践力をつけ、志望校の入試問題へと学習を進めていきますが、3年生からほとんど同じことを4年間やってきて、なぜできるようにならないのか?と思われている保護者のかたもいらっしゃるでしょう。
このような場合、力のどこかが寸断されている場合が多いものです。漢字が苦手、問題文をよく読んでいないなど、小さなことが寸断の原因となっている場合があります。寸断されている部分をきっちりと学習していけば、堆積された知識がつながって、電気がつくように点が上がっていきます。
「なぜ?」「どうやって?」「根拠は?」を大切にすることで、寸断されている部分が明らかになっていきます。なぜ?を徹底すれば、短期間で国語力は上昇します。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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