【回答:若泉 敏】適性検査・受検対策<その5>

「中学受検は親子の受検」とも言われ、保護者のかたの役割はとても大きいもの。受検準備が進むにつれて、心配事や気がかりもいろいろ出てくるでしょう。よくある相談事例について、専門家の先生がたや、合格家庭の先輩保護者のアドバイスを集めました。

公立中高一貫校の出題傾向が本人に合っていません

公立中高一貫校の面接の準備は?

公立中高一貫校受検対策コースの他にできる作文対策は?

公立中高一貫校の出題傾向が本人に合っていません

公立中高一貫校を受検する予定ですが、どうも適性検査の出題傾向を見ると本人と合っていないように思えます。でも本人は受検する気満々です。応援してあげるために秘訣(ひけつ)を教えてください。
親も本気で受検を考えて努力をしなければ、子どもの受検の応援はできない

適性検査は受検する都道府県または中学校ごとにその出題傾向は異なります。また受検生一人ひとり得手不得手の分野が違います。そして現在何年生であるかによって、力を注ぐべき課題が変わります。
相談者のかたは「適性検査の出題傾向」の何を指して「本人と合っていない」と判断しているのでしょうか。「応援してあげる」お気持ちはわかりますが、親がどのような状況にあって、どこまで支援できるかは、ご家庭それぞれです。具体的な状況がわからないので、「秘訣」の提示はできませんが、とりあえず、一般的な対応を申しておきましょう。

(1)受検予定の学校の適性問題、いわゆる過去問をサンプル問題も含めて、親がもう一度丁寧に解いてみましょう。
(2)お子さまの特性をよくつかんだうえで、お子さまにとって何が課題なのかをつかみましょう。
(3)課題を克服するために、何をどのように改善工夫して取り組むべきか考えましょう。
(4)その努力をしたうえで適性検査がご本人にどうしても合わないと判断する場合は、記念受検(合格する見込みはないが、志望校を受検した記録を残すための受検)をして、お子さまの次のステップの礎としましょう。

公立中高一貫校の面接の準備は?

さいたま市立浦和中学校の受検を予定しています。第2次選抜に面接がありますが、どう準備したらいいですか。
家庭の中で何か問題が起きたときに、それをどうやって解決するか、日常的に話し合いをする習慣をつけましょう

1つ目は小学校の学級活動の中で、友達と協力して課題を解決していく姿勢をお子さんがつくれるように、保護者が有効な課題解決方法をお子さんに示唆しておくことです。
2つ目は、提示された課題を正しく分析する力を育成することです。
例えば「ゴミのない美しい学校づくりのために、私たちの班が共通して取り組むことを決めよう!」という課題が指定された場合には、「ゴミのない美しい学校づくり」という課題についての分析力が試されます。「ゴミのない学校づくり」の提案と、「ゴミをなくしたうえでさらに美しい学校をつくる」提案が考えられます。提示された課題について、分析的に多様に考えることができる児童だということが面接官にアピールできれば、リーダー性が評価されます。
話し合いの中で他の児童たちと意見が異なる場合には、固執して説得する場合もあれば、逆に自分の主張を取り下げる場合もあるでしょう。それによって、協調性も評価されます。その場の状況に応じて柔軟に対処しなければいけません。

またコミュニケーション能力も評価の対象です。相手の発言を正しく聞き取れているか、相手の意見の不明な点を指摘できるか、相手の意見とかみ合った自分の意見を発信しているか、根拠を示して説明できるか、具体例を挙げて自分の考えを相手にわかりやすく話せるか、などの能力が問われています。
家庭でなんらかの課題を取り上げ、解決のための話し合いをする、これを日常的に行っていく、そのような準備をすることで、こうした能力を養うこともできるでしょう。まさに親の力量が問われる場面かもしれません。

公立中高一貫校受検対策コースの他にできる作文対策は?

作文が苦手で困っています。進研ゼミの「作文・表現力講座 公立中高一貫校受検対策コース」もやっていますが、それ以外に何かできることはありますか。どうしたらいいでしょうか。
問題集や過去問の問いから、条件を拾い上げる練習をしよう

作文には、課題作文と、自由記述の作文があります。
課題作文というのは、書くべき課題が明示され、問いに出ている条件を踏まえて、指定された字数内で記述する問題です。設問に書かれている条件を正しく拾うことが大切です。適性検査として作文が出される場合は、随筆や論説文など筆者の考えや意見が述べられた文章が最初に提示され、それに基づいて自分の考えを記述することが多いです。
一方、「作文」として設定されている自由記述型の作文は、課題作文よりは条件が緩やかで、自由度が広いのが通常です。しかし自由気ままに書いていいのではありません。必ず「○○について」あなたの思っていること、感じていることを書きなさい、となっています。写真や絵で例が挙げられている場合もあります。自由記述の作文といっても、何らかの条件は提示されていて、それに対応した記述が要求されているのです。

対策としては、公立中高一貫校対策問題集や過去問「問い」の文を親が子どもと一緒に読み、どのような条件が書かれているか、拾い上げる練習をします。次に、自分の考えを効果的に記述するために、どのような内容をどのような順番で書いたらいいか、全体の構成を考える練習をします。また、文章の構成とともに、どのような接続語をどのように使えばいいのかを研究しておくことも、有効な対策になります。

プロフィール



学習塾「スクールETC」代表。思考力を問う公立中高一貫校の適性検査対策に、若泉式の読解力・記述表現力の指導法が注目を浴びる。適性検査問題分析研究の第一人者としても活躍。著書に『公立中高一貫校 合格への最短ルール 』(WAVE出版)などがある。

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