私立中学受験の志望校決定権者は誰か その3[中学受験]

志望校を誰が決めるか、ということは小学6年生の5月ごろに第1志望を決めるご家庭が多いなかで、この時節まことに微妙な問題である。
実は私どもの調査によれば受験する学校の難易度により、家庭における志望校の決定権者に違いがあるのだ。今回は保護者アンケートと学校アンケートを学校の難易度で分類して、どのような差異と傾向があるかを分析してみた。ちなみに、四谷大塚の「2008年度合不合判定テスト(第3回)80偏差値一覧」の偏差値を参考に、60以上、50~60未満、50未満、その他とした(学校数の関係で、3段階で分析)。

【図1 志望校の決定権者1位(保護者アンケート:難易度別)】
志望校の決定権者 偏差値60以上(保護者アンケート)志望校の決定権者 偏差値50~60未満(保護者アンケート)
志望校の決定権者 偏差値50未満(保護者アンケート)

【表1 志望校の決定権者1位(保護者アンケート:難易度別)】
志望校の決定権者1位(保護者アンケート:難易度別)
 ※数値はグラフに合わせて調整

【図1】【表1】は保護者に聞いた志望校の第1決定権者(決定権が強いと思う上位3つの内の1位)を難易度別の志望校に分類して集計したものである。志望校の難易度が高いほど「3.受験生本人」の割合が多く、志望校の難易度が低くなると「2.受験生の母親」の割合が多くなる傾向があることがわかる。また、「1.受験生の父親」は、どのカテゴリでも少ない数字ながら、偏差値50未満のカテゴリの保護者で割合がさらに少なくなる傾向があることがわかる。

難易度の高い学校を志望する受験生は、自分で志望校を決定する傾向があることは予想しやすいが、本当に子ども任せで良いのだろうか? 子どもは校風や教育方針よりもわかりやすい偏差値で学校の評価をしがちである。もしも、偏差値だけで志望校を決定した場合、自分に合わない学校を選択しかねない。逆に、偏差値がそれほど高くない学校は数が多いので、母親は偏差値に振り回されることなく、偏差値以外の要素で子どもに合った学校を選択することができるため、学校情報の収集に努力することが考えられる。その結果、学校情報に詳しくなり、志望校の決定にリーダーシップを発揮するのは当然かもしれない。

【図2 志望校の決定権者1位(学校アンケート:難易度別)】
志望校の決定権者 偏差値60以上(学校アンケート)志望校の決定権者 偏差値50~60未満(学校アンケート)
志望校の決定権者 偏差値50未満(学校アンケート)

【表2 志望校の決定権者1位(学校アンケート:難易度別)】
志望校の決定権者1位(学校アンケート:難易度別)
 ※数値はグラフに合わせて調整

【図2】【表2】は、学校に聞いた、「学校が予想する志望校の第1決定権者」を志望校の難易度別に分類して集計したものである。学校アンケートでは、「2.受験生の母親」を最も強い決定権者と予想する回答が最多であることはカテゴリによって変わらないが、志望校の難易度が高いほど「1.受験生の父親」「3.受験生本人」の割合が大きく「2.受験生の母親」の割合が少なくなる傾向があることがわかる。この傾向は保護者アンケートでも同様であるが、各カテゴリとも保護者アンケートは学校アンケートよりも「3.受験生本人」が約20~30%多く、「2.受験生の母親」が約20~30%少ない。その差から、最も強い志望校の決定権者は「3.受験生本人」であることに気が付いていない学校が一定の割合で存在することがわかる。

また、志望校難易度が高いほど「3.受験生本人」の割合が大きい。高みにならって物事は進むことから「中学受験でも、受験生本人が決定権者となる割合は約60%までになっており、今後もその割合は増えていくのでは」と言えそうだ。従って、いかにそこに保護者の考えを反映させるかが、今後ますます工夫のしどころとなってくるのである。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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