問題文と設問(2)設問から先に目をとおすことの意義[中学受験合格言コラム]

問題文を読むよりも先に、何が問われているかを知るために設問から先に読む生徒はいるし、それをすすめる先生もいる。はたしてそれは有効なのか、もし有効であるならばどの程度なのか、という点を考えたい。

ところで試験のやり方とか勉強のやり方というのは、実にその人の個性が現れる場合が多いと思う。おそらく何回かやってみて、一番成果があったと思われる方法が「自分のやり方」として定着するのであろう。
しかし「効率の悪い方法」を身に付けてしまうと、試験のたびにそれを繰り返すことになるので、結果としてかなりのロスになってしまうことになる。人生において試験は中学入試だけではないし、社会に出てからも試験は数多くあるのだから、勉強の仕方や試験の受け方はある程度真剣に考える時期があっても良いかもしれない。
書店でも「効率的な勉強方法」などのノウハウ本が多数あるところを見ると、やはりそういったニーズはあるのだろう。

さて本題に戻るが、設問を先に読むメリットとしては「何が問われているかを先に知る」ことである。確かに「○○○を具体的に言い換えている言葉を抜き出せ」などの「抜き出し問題」などでは、設問を先に知ることで意識しながら問題文を読めるというメリットはある。
意識すればより見つけやすいだろうから有効な方法だとは思う。しかし傍線部における「気持ち」や「意味」を問う記述問題や選択肢問題に関して、事前にその内容を知っておくことにどのくらい意味があるのか。
たとえば事前に選択肢問題の選択肢を読んでも、それぞれが意味するものを理解するのは難しいであろう。あるいは接続詞の穴埋め問題などでも、先に選択肢を読むことにはあまり意味を見出せない。

このように考えてみると、問題文という広いグラウンドから何かを探せという抜き出し問題などには有効であるが、他の形式の設問には効果が薄いような気がする。また抜き出し問題が複数ある場合は、同時にそれらのことを考えて問題文を読めるのかという点も疑問である。つまりあまりに多くのことを考えながら読むことで、本文に集中できないのではないかと思えるのである。

以上をまとめると、先に読むことでメリットのある設問形式とそうでもない設問形式があるということになる。他の形式の設問はともかく、「抜き出し」などの形式の設問に関してはあまり数が多くなければ、設問から先に読む方法は意義があると言えるのではないか。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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