弱点補強はどうすれば良いか?[中学受験]

5月ともなると、「新しい知識を勉強するのに忙しくて、とても自分の弱点を補強している時間はない!」という叫び声が6年生の皆さんから聞こえてきそうである。
事実、塾の授業は宿題を含めかなりのボリュームになっているであろうから、今まで余裕のあった生徒でも時間的に追いまくられる日々を過ごしていることであろう。
もちろん毎日の学習を着実にこなしている生徒は、それで構わない。ある程度弱点があったとしても、生徒が一般的に苦手とする単元は、夏期講習で復習できるカリキュラムになっている塾が多いようである。
問題があるとすれば、日々の授業で学習している内容までもが積み上げられずに、どんどん弱点が増加している生徒である。
たとえば、今日授業で習った内容が「なるほど新しいことを一つ学んだ」と思えるかどうかが基準になるであろう。
授業を聞いても「なんか良くわからないなあ」であれば、すぐさま弱点強化をする必要があるということだ。

弱点強化で一番悩むのは、過去に学んだ内容を最初から学び直すか、あるいは今勉強していることを中心にやっていくかという点である。
前の内容を復習すれば今やっていることは当然おろそかになり、今やっている内容を中心にすると、わからない内容がとびとびに出てくるので全体がつかめない恐れがある。
理想を言えば今の塾の授業を大切にしながら、弱点を「まとまり」で補強するのが一番である。
また前に述べたように、模擬試験の結果を利用して「弱点補強」を行う方法もある。このやり方は非常に効率的な方法であるが、その科目全体が苦手な場合は困る。
一般的には弱点が非常に多い生徒は前の内容を中心に、弱点はあるが今の授業にそんなに支障がない生徒は、今の授業内容を中心にわからないところが出てきたらそこに戻るというのが、一つの目安である。

ところで算数の弱点で何が困るかと言えば、なんと言っても「計算ができない」「計算が遅い」ということであろう。
「6年生で計算が苦手?」と思われるかたもいると思うが、こういった生徒はけっこう多いようである。
またふつうの計算はできていても、「工夫して計算する」ことは少なからず苦手な生徒は多い。
もし計算が苦手ならとにかく一定の時間を割いて、計算練習をすべきであろう。市販の「計算練習帳」なるものを購入して、毎日30分でも「歯を磨くように」演習を習慣付けてほしい。
考えてみればわかることだが、普通の生徒よりも計算が「苦手」「遅い」ということは、大変なハンディなのである。
仮に他の生徒が30秒でできる計算を60秒かかったとする。たった30秒の差だが、2倍かかっていることになる。単純に考えれば他の人と同じ量の問題を解くために、2倍の勉強時間が必要になってくる。
ご存じのように中学受験において、算数の力は問題量に比例するから、演習量不足は志望校合格のためには大変な障害になり得るのである。

算数の「計算」にあたるものを国語で考えると、漢字の読み・書きであろう。
本当に基礎の基礎であるため軽視されるのか、4・5年生の悩みとしては「文章を読むのが遅い」とか「記述問題が書けない」というのが多く、「漢字が苦手」という声はあまり聞かない。
しかし6年生の夏休みを越えても、「模擬試験の漢字の問題が60%しか取れていない」という生徒が案外多いのである。
もし「漢字の苦手」があるのであれば、まずはそこを補強してほしい。このまま漢字の苦手を放置していては、国語の偏差値を伸ばしたくても伸ばせないであろう。
一応の目安としては、漢字の試験の正答率が80%程度であれば問題ないと考える。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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