算数の出題傾向を考える[中学受験]

 算数の過去問を見ると、単元は「数の性質」「比」「特殊算」「図形」などに分けられている。そして多くの過去問には単元別に頻出度を示す“出題分野の分析”なるものが出ていると思うので、それを見るだけでもお子さまの志望校の出題傾向がだいたいはわかる。例えば「豊島岡女子」の一覧を見てみると、いやに「図形問題が多いな」と感じると思う。まずは志望校の出題傾向をここで確かめてほしい。次に問題を見れば、さらに詳しいことがわかる。例えばこの学校では「移動する問題」が毎年のように出題されている。それは「立体が移動する」場合もあれば、「点が移動する」場合もあるが、とにかく「何かが動く問題」が多いことを痛感するであろう。問題を実際に見てみないとここまでのことはわからないし、わからなければ対策の立てようが無いということだ。

 「複合問題(融合問題)」も問題を実際に見てみないと、本当の意味ではピンとこないかもしれない。前に述べたと思うが、特殊算は解き方がパターン化しているため、難度を上げるためには複合問題にする場合が多い。例えばツルカメ算だと簡単に解けてしまうが、「流水算+ツルカメ算」になるとツルカメ算を使うことがカムフラージュされるため、かなり難しくなるのである。しかも「特殊算は複合問題になって出題される可能性がある」と前もって覚悟しておかないと、解法の糸口を見逃す場合もあるので、ここでも出題傾向を確認する意義はある。なお「複合問題」かどうかは、解答・解説に掲載されている単元を見ればすぐわかる。一つの問題で単元が複数あれば(例:「流水算、ツルカメ算」)、その問題は「複合問題」である。

 お子さまが過去問演習で実際に問題を解いていけば、志望校の傾向はさらに明確になる。ただしある程度の時間がかかるので、過去問演習は計画的に実施する必要がある。例えば志望校3校、科目数4科目、各5年分を実施する場合を考えてみよう。ここで過去問演習は試験の実施とその採点だけで終わりではない。つまり間違えた問題を見直し、次には解けるようになっている必要があるから、50分の試験問題であれば、見直しにも50分必要と考えたい。これを計算すると、3(志望校)×4(科目)×5(年分)×50(分:試験時間)×2(実施と復習)=6000(分)=100(時間)かかる計算になる。1日4時間演習にあてたとしても、25日必要だ。どうやってこれだけの時間を捻出するのか?今でさえ塾の授業や宿題に追われているのに、やる時間があるのか?ということになる。これを解決するには、今までの学習とは少し考え方を変える必要がある。どう変えるのかというと、今までは例えば「算数ができるようになるために」勉強してきたが、これからは「志望校の合格最低点」をクリアするために勉強するのである。

 例えばこんなケースがある。私の平山入試研究所では国語の過去問を通信添削で指導しているが、昨年の生徒で慶應中等部を目指す男の子がいた。国語が苦手ということだったが、回数を重ねるごとに得点をあげ、12月には合格最低点を超える得点を継続的に取れるようになった。本人もすごく嬉しかったのであろう、更なる過去問演習の指導を希望してきたが、「今すべきことはこれ以上国語を伸ばすことではなく、他の科目に力を注ぐことではないか。」と返事した。ご両親も非常に納得して、結果は見事志望校に合格した。あのとき彼に必要だったのは国語の点数をこれ以上あげることではなく、他の弱点科目に力を注ぎ、総合点をアップさせて合格することだったのである(科目間バランス)。つまり総合点をいちばんアップさせるには、今何をすべきかを見出し、勇気を持って「それ」を行うということである。なぜ勇気が必要なのかというと、「それ」を行うことは、同じときに「何かをステル」ことに他ならないからである。二学期のキーワードは、この「何をステルか?」である。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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