偏差値に何を読むか[中学受験]

 こうしてみると確かに偏差値に関わらず受験している方が少なくないにしても、それはやはり「受けたいから受ける」ということであるかもしれない。そのこと自体はとてもよいことで、高校受験と違うところだ。

 高校受験というのは、やはり中学浪人は出せないのでガチガチの進学指導をする。「偏差値輪切り」とよく批判される背景には、そうした「中学浪人」は出せない、という事情があった。「あった」というのは、もはや少子化で、高校受験は私立公立にかかわらず定員を割る学校が多くなって事情が一変している。上位校でも推薦入試が相当数を占める状況にあり、また学校の内申もその関係でウエイトが高い事情がある。

 一方、中学受験はそうした意味では高校受験の機会が先にあることもあって、偏差値にしばられない良さがある。

 しかし、その数字が25%のこの低確率だから、これはこれで合格しそうもない。成算のないことに子どもを挑ませているという結果を招いていることになる。又そうした心理の中には、余り偏差値の低いところは受けさせたくない、という偏差値のもつランク付けへの微妙な機微が働いてもいるはずである。

 もっとも偏差値40台などというと、いかにも低そうに見えるが、同じ学校で高校入試の偏差値を見ると50台後半だったり、なんと60台だったりする例は決して珍しくない。これは中学受験がいわば小学生の成績上位者が母集団であるのに対して、中学生の場合はほぼその学年の生徒の8−9割を対象とした偏差値であるからだ。しかしそんな高校受験の偏差値は見えないので、やはり偏差値が低いとどうも気が進まない、という心理なのだろう。

 さてしかし、偏差値50さえクリアすれば25%が80%になる、という先に触れた妙味が出てくる。つまり確率がみえてきて確かに学校が身近になる効果がある。従って、とりあえず目指す学校が50以上なら私がおすすめしたいのは、放っておけば25%くらいしかない確率を50%や80%にもっていける偏差値UPをやるべきだ、ということである。

 まさに偏差値の有難味が味わえるのである。逆に言えば、偏差値が40台の学校の多くは倍率は1−2倍なので、偏差値などの必要性は無いといってよい。

 むしろ学校の課す入試にさえ合格すればよいから、長時間高コストの中学受験塾に一から十まで付き合うこともないのである。むしろそこは学校の良さとご本人の良さが調和する程度の準備をしておけば良いので、入試にしても合格さえすればよく、何が何でもトップや上位成績で入る必要はない。

 そのことから言えるのは、ともかく6年生になって偏差値が有効な学校かどうかをまず確かめてから偏差値を気にすべきだ、ということである。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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