グローバルな英語教育は小学生から? 世界の小学校英語教育事情
現在、小学校5、6年生では年間35単位時間の「外国語活動」が必修化されています。2013年12月には『グローバル化に対応した英語教育改革の実施計画』(以下、『実施計画』)が出され、小学3年生から外国語活動をする案が明文化されました。そこで、小中高等学校を中心に英語教育研究をしている、ベネッセ 教育総合研究所 主任研究員(グローバル研究室)・加藤由美子氏にお話しをうかがいました。
海外でも小学3年生から外国語を学ぶのが主流
外国語教育において、『聞く』『話す』『読む』『書く』の4つの技能を一度にやるのは、学習者にとって負担が大きいといわれています。本来、言葉というのは、赤ちゃんがそうであるように、たくさん聞いて、そのあと話しはじめて、本格的に鉛筆を握るのは5、6歳からですよね。それから読み、書きに取り組んでいきます。5、6年かけて取り組んでいくものに対して、いきなりやっていくのは負担が大きいものです。
そういったこともふまえて、『実施計画』の具体化を検討する『英語教育の在り方に関する有識者会議』では、小学校段階では、『聞く』『話す』をたっぷりやって、次に『読み』、軽度の『書き』をやっておく。そして、中学校で本格的な学習につながるような目標が検討されています。
海外では、小学3年生から外国語教育を始めている国が多くあります。基本的には、小学1・2年で母語の基本をきっちり学び、それが確立したうえで混乱させずに外国語に取り組んでいる傾向があります。
低・中学年では、聞いたものをそのまま再生できる強みがあります。それだけことばの吸収力が高いのです。個人差はありますが、間違えてもいいから声に出してみる、歌を歌ってみることもできます。素直に取り組める時期に、英語教育を始めることは効果的であると捉えられているようです。
高学年では、声に出すことが恥ずかしく、英語らしい音を出すことに照れてしまうような自意識も出てきます。生後、日本語使用の期間が長くなると、どうしても日本語の音に置き換え、訳してしまいたい気持ちも強くなります。
そういう意味では、低学年で学んだ方がいいとも言えますね。低学年の子どもであれば、こういうことかなと想像しながら使ってみることができますが、高学年になると論理的に考え、わかったわからないをはっきり認識しますので、止まってしまうこともあります。わからなくてもだいだいで進めていけばいいことが、そのようにはできづらくなります。
小学校のうちに英語を学ぶメリットには、抵抗感の少ない時期に英語に触れていくことで親しむことができる、外国語を使うことはおもしろい・世界が広がるという気持ちを持てること、などがあります。身近に英語の音声などに触れていくことで、将来的に英語への抵抗感を持たなくなる可能性も高くなるでしょう。
デメリットとしては、教え方を誤ると、英語が嫌いになる時期が早くなるだけになってしまいます。特に、英語教育では、文字によるつまずきが多いといわれています。アルファベットの指導も、丁寧にしてあげることが大事です。さらに、成績を取るためだけの「勉強」にしてしまうと、せっかくの取り組みも無駄になってしまいます。旧来型のテストで点を取るためのだけのような学びをしてしまうと、問題を解くためだけの学習を繰り返すことになってしまいます。
英語を学ぶことによって、大学・学部や職業選択の幅が広がるなどということもありますが、たくさんの外国の人と英語を使ってつながることができるようになります。それは、子どもたちの人生の可能性を広げ、豊かにしてくれます。
そのことを忘れずに、子ども達が英語を学習することを応援したいと思います。
2019年11月1日、文部科学省より2020年度(令和2年度)の大学入試における英語民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」の導入を見送ることが発表されました。