英語外部試験を大学入試に「換算」へ 授業の在り方にも影響?‐斎藤剛史‐

政府の教育再生実行会議は2013(平成25)年10月の第4次提言で、大学入試改革などの一環としてTOEFLなど民間の英語能力検定試験の活用を打ち出しました。これを受けて文部科学省の有識者会議は、大学入試や高校入試で積極的に外部試験を活用するため、関係者らによる協議会を設置して、具体的方策を検討するよう提言しました。英語の外部試験の活用は、大学入試の改革にとどまらず、高校や中学校などでの英語教育全体に大きな影響を及ぼすことにもなりそうです。

中学校や高校の学習指導要領は、英語について「読む」「書く」「話す」「聞く」の4技能をバランスよく育成することを目標に掲げています。この狙いは、グローバル化に対応するため、英語を使って積極的に外国人とコミュニケーションできる能力を養うこと、つまり実践的な英語力を育成することです。ところが、大学入試などの英語の試験では「読む」「書く」が中心となっているため、「話す」「聞く」に力を入れると子どもたちの入試の成績に影響が出るというのが学校現場の偽らざる本音です。このため文科省は、「英語教育の在り方に関する有識者会議」の中に小委員会を設け、英検やTOEFLなどの外部試験を大学入試などで活用することについて検討していました。

同小委員会は報告書の中で、英語の4技能を適切に育成・評価していくため「各大学の入学者選抜における資格・検定試験の活用を奨励する」という方針を打ち出したほか、高校入試についても英語の外部試験の活用を検討するよう求めています。ただ、英検やTOEFLなどの外部試験は、それぞれ目的やレベルが異なるため、そのまま利用することはできません。このため同小委員会は、中学校・高校・大学などの関係者らによる協議会を設置し、各種外部試験の成績を大学入試センター試験や各大学の個別試験の点数に「換算」する方法(外部のPDFにリンク)を検討するよう提言。さらに、外部試験の受験料負担、適正・公平な実施体制、外部試験と学習指導要領との整合性などの検討も踏まえ、外部試験活用のガイドラインを作成する必要があるとしています。これを受けて文科省は、今秋にも協議会を設置する予定です。

実際、大学では外部試験の成績を大学入試で活用するところが増えているほか、高校では大阪府が2017(平成29)年度の府立高校入試からTOEFLや英検などの成績を英語の試験に「換算」できるようにすることを決定しています。入試において「読む」「書く」「話す」「聞く」の4技能を総合的に判定する外部試験の活用が進めば、中学校や高校の授業でも「話す」「聞く」に力を入れざるを得なくなるでしょう。ただ、英語教育関係者の間には、外部試験の活用は英語教育の成績評価を外部に委ねることにつながり、外部試験対策に重点を置いた授業になるのではないかと懸念する声もあります。英語の外部試験の活用は、大学入試・高校入試における英語の在り方だけでなく、中学校や高校における英語教育はどうあるべきなのかという大きな問題を問い掛けているといえそうです。


2019年11月1日、文部科学省より2020年度(令和2年度)の大学入試における英語民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」の導入を見送ることが発表されました。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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