小学校の成績や通知表の付け方は?知っておきたい読み解き方とお子さまへの声かけ

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  • 教育動向

学期の終わりに先生から渡されることの多い通知表。
どのように読み解けばいいのか、どう付けられているのか気になることもあるのではないでしょうか。
通知表を踏まえて、お子さまにどんな声をかけてあげればいいのか迷うこともあるかもしれません。

そこで、通知表の基礎知識から付け方、どのように読み解いてお子さまをフォローしていけばいいのかについて、公立小学校の教員を20年近く務めた経験を持つ、ベネッセ教育総合研究所 教育イノベーションセンター・庄子寛之主任研究員に聞きました。

この記事のポイント

通知表の種類と基礎知識

通知表・通信簿は、児童・生徒の学校での学習や生活の状況を保護者に連絡するためのもの。教科の成績や生活の記録などが記され、学校と家庭が連携して教育にあたるために作成されています。学年や学校によって様式はさまざまです。

また、意外に思われるかたもいらっしゃるかもしれませんが、通知表の作成は義務ではありません。通知表は、「指導要録」と呼ばれる児童・生徒の出席状況や成績などを記録した作成の義務がある公式記録をもとに作られていますが、通知表自体は義務付けられたものではないのです。そのため、通知表を発行しない学校や、一部の学期だけ発行する学校などもあります。

2020年度から始まった現行の学習指導要領により、通知表の内容も変わっています。
保護者のかたの中にも「自分のころとは違うな」「上の子の時と違うな」などと気付かれているかたもいらっしゃるかもしれませんね。

新学習指導要領により、小中学校における通知表の成績は各教科で「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」という観点別評価で行われるようになりました。

特に、通知表のもととなる「指導要録」では、観点別学習状況の3段階評価とそこから導かれた5段階の評定が記されています。

通知表の読み解き方

通知表の3つの観点「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」、また「生活の記録」「所見」がそれぞれどんなことを表すかを確認しておきましょう。

通知表の3つの観点が表すもの

「知識・技能」では、各教科の必要な知識を理解しているか、学んだ内容を活用できるかが評価されます。算数であれば、九九を理解して、計算ができるといったものですね。

「思考・判断・表現」は、学んで理解したことやできるようになったことを使って、どう応用できるかが評価されます。知識があるだけでなく、それを使って考えを深めたり、わかりやすく伝えたりできるかが問われます。

「主体的に学習に取り組む態度」は、学習に取り組む姿勢が評価されます。
授業に積極的に参加しているか、提出物にしっかり取り組んでいるか、粘り強く取り組んでいるかといったものが挙げられます。

通知表の「3つの観点」をどう読み解く?

通知表を読み解くには、「どの観点にどんな評価が付いているか」「学校でどのような活動をしてきたか」に注目しましょう。

「知識・技能」は、テストの点数をもとに評価がつくことが多くなります。

学校によって基準は異なりますが、90点以上であれば◎、70点以下なら△といった具合です。「知識・技能」に良い評価が付いているなら、テストにもしっかり取り組んで良い点数を取り、必要な知識をしっかり身に付けることができたととらえられます。

「思考・判断・表現」に良い評価が付いている場合は、知識を理解しただけでなく、知識を活用して応用問題に取り組めたり、知識をもとに難しいテーマに対して予想や仮説を考えたり、グループワークなどで自分の考えをわかりやすく説明できたりしたと考えられます。

「主体的に学習に取り組む態度」に良い評価が付いているなら、授業に積極的に参加したり、授業中に協力しつつ実験や観察に取り組めたり、意欲的に観察や調べ物ができたりした、といった見方ができます。

良い評価が付いている部分は、積極的にほめてあげてください。
「ここがよくできているね、何が一番面白かった?」など、お子さまに話を聞くと、どのような点が評価されたのかわかりやすくなるでしょう。

「生活の記録」「所見」をどう読み解く?

「生活の記録」では、「思いやりがある」「責任感がある」「公平である」といったお子さまの性格や考え方の特徴などが見えてきます。
ただし、これらの評価は絶対的なものではなく、クラスの様子や教員との関係性などに左右される場合もあるものです。そのため、最近では「生活の記録」をなくす学校も増えてきています。

担任教員の所見欄からは、お子さまの学校での様子や、がんばったことなどを知ることができるでしょう。ただし、最近では所見欄は形式的な内容にとどめ、詳しいお子さまの様子や、成長した点や成長するための課題については面談で個別に伝えるというケースも増えています。私自身は、保護者のかたに個別に手紙を書いてお子さまの様子を伝えていました。また、校内チェックの煩雑さや教員の働き方改革の観点から、所見欄自体をなくすケースもあります。その分、面談などでのフォローが行われています。

公立の成績の付け方は全国で同じ? 絶対評価・相対評価は?

【Q】公立での成績の付け方は全国的に決まった基準や方法がありますか?
(A)原則は決まっていますが、細かい部分は学校ごとに異なります。

評価する項目は全国共通の原則がありますが、テストの点数や普段の授業の提出物、様子などをどのくらい重視するかは学校ごとに異なります。そのため、細かい部分で共通するマニュアルがあるわけではありません。

【Q】成績は絶対評価と相対評価のどちらですか?
(A)基本的に絶対評価です。

現在、小学校の成績は絶対評価で付けるのが原則です。そのような形で運用されています。ただ、現場の実態に合わせて微妙な調整が入る場合があります。その場合も、同学年のクラス間で相談し、評価基準をそろえ、ご家庭に説明可能な状態で出すよう配慮しながら付けられています。

また、通知表の評価基準については、4月の保護者会の際などに書類で渡されることが一般的です。書類をもとに口頭での説明があることも多いでしょう。気になる点などがあれば、質問してみるのもいいですね。

【Q】「1学期より3学期のほうが成績が良くなる」のは本当ですか?
(A)小学生が1年間で成長する力を考えると、よくあることだと思います。

中学や高校と異なり、小学校における評価は、子どもたちの成長を認めるためのものという位置付けが強いです。この1年間で伸びてきた部分をできるだけ評価してあげたいという先生の思いもありますし、実際に小学生の子どもたちは1年間で大きく成長します。

学年が変わると成績が落ちたという感覚を持つこともあるかもしれません。それは学年が変わったことで、求められることや必要とされる能力が変わったからということも背景として考えられます。落ち込むのではなく前向きに、3学期に向けて成長していくとよいのだと思います。

【Q】いつ成績を決めていますか?
(A)日々、情報は集めていますが最終的には学期ごとの最後のテストが終わってから付けます。

基本的には日々、ずっと記録を残していて、学期の情報が出そろった段階で総合的に評価します。1学期の成績なら7月上旬から、2学期は12月、3学期は2〜3月です。終業式の2〜3週間前にはテストが終わることが多いので、そこから成績を付けるという流れです。小学校教員のかたが口をそろえますが、とても大変な作業です。

成績は何をもとに決めている?


【Q】どのような観点から成績を付けていますか?
(A)「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」など、学習指導要領において示されている観点で評価しています。

たとえば「知識・技能」であれば、テストの点数をもとに判断をすることが多いです。

ただ、一問一答形式のテストだけではなく、たとえば歴史上の出来事であればその背景にある事象であったり、算数であれば単に答えを出すだけではなく、なぜその計算で答えが導けるのかなど、深い理解を伴った知識であったりする必要があります。テストもそのような評価ができるよう設計されています。

テストの点数が伸び悩んでいる子の場合でも、「ノートで自分の理解を整理できている」「テストの間違いを見直す姿勢が身に付いている」などが見られれば、「主体的に学習に取り組む態度」などで評価します。文章題や作文、授業の中で自分なりの考えを発揮させる課題などでは「思考・判断・表現」の評価につながります。

【Q】成績を付けるうえで最も大切にしていることは何ですか?
(A)一面的に評価しない・説明責任を果たせる・できたことに目を向けることです。

特に説明責任については、今の先生がたはとてもしっかり取り組まれています。「なぜこの成績なんですか?」と聞かれた時、お子さまの普段の様子や記録をもとに、しっかり細かく説明できるよう準備しているかたが多いです。それは単にクレーム対策ということではなく、それだけ丁寧に子どもたちの成長を見ているという姿勢の現れなのだと思います。

【Q】普段の授業では、どのような点が成績に反映されますか?
(A)教員によって異なります。

たとえば、手を挙げる回数をカウントしている先生もいれば、ノートを授業ごとに回収して思考を整理できているかどうかを見たり、ワークシートに考え方を書かせたりする先生もいます。このようにいうと常に監視されているような窮屈さを感じるかもしれませんが、テストの点数だけでなく普段の授業の中でも子どもたちのよいところを認めてあげたいという思いの先生が多く、加点評価をするためにいろいろな点を見ています。

【Q】成績を付ける際に参考にする提出物は何ですか?
(A)すべての提出物を参考にしているといってよいと思います。

普段の宿題の内容、作文の提出物、ちょっとした課題など、すべての提出物をもとにして、適切な評価を出せるようにしています。

【Q】授業や提出物以外で、成績に影響する要素は?
(A)教科の評価については授業や提出物・テストの点数で評価するのが基本です。

教科以外の部分は生活の様子として別軸で評価します。生活態度に課題があるからといって教科の成績が下がることはありません。ただ、例外があるとすれば国語の「聞く・話す」の評価です。これはテストだけではなく、普段のさまざまな活動の中で、他の人の意見を聞いたり自分の考えを述べたりすることができた場合は、「話す・聞く」に加点する先生もいらっしゃいます。

学習評価の3つの観点と成績の上げ方 短期間で成績を上げるには?

では、短期間で成績を上げるコツは何かあるのでしょうか?

【Q】学習評価の観点のうち「知識・技能」で成績を上げるには?
(A)学校で学習した内容をしっかり身に付けていきましょう。

「漢字をしっかり覚える」「計算がしっかりできる」などはもちろん、表面的に問題が解けるだけではなく、なぜこのような計算で答えが出るのかなど、学年が上がるに従い「深い理解を伴った知識」が重要になります。基本的には授業でしっかり学び、理解が不十分な点についておさらいすることで伸びると思います。

【Q】学習評価の観点のうち「思考・判断・表現」で高評価を得るのは、どんな時ですか?
(A)グループワークや発表、作文などの提出物において自分なりの考えを表現できている場合に評価につながることが多いです。

テストによる評価だけで評価しきれない観点です。自分の考えを持つ、そしてそれを表現する機会において、どのように取り組んでいるのかを見ていることが多いです。さまざまな発表機会や提出物なども評価の対象になります。

【Q】学習評価の観点のうち「主体的に学習に取り組む態度」について、具体的にはどのように取り組むと評価されやすいですか?
(A)日頃の学習上の姿勢を見ることが多いです。

たとえば算数において新しい単元に入り、解き方を考える際に、わからないなりに頭をひねって考えようとしているか。テストで間違えたで終わらせずに、見直しをしてどうして間違えたのか考えようとしているか。ノートに学んだことをまとめようとする姿勢があるかなど、もちろん子どもそれぞれの個性があるので、授業で積極的に発表していないけれども学ぶ姿勢が十分にある子もいます。教員はそれぞれ、さまざまな観点で評価して一面的な評価にならないように取り組んでいます。

【Q】短期間(1学期分)で成績を大きく上げるコツはありますか?
(A)普段の授業をしっかり受けて、日頃から復習を行いましょう。

小学生は特にテスト勉強などをせず、出たとこ勝負でテストを受ける子が多く見られます。そのため、「テストがあるよ」と言われた時に、少しでもおさらいをしておくだけでも点数は上がりやすくなります。

また、ケアレスミスで少しずつ減点されてしまうようなケースも見られます。たとえば算数の単位の付け忘れなどです。地味なケアレスミスですが、とても「もったいない」と思います。テストがある日に「単位の付け忘れに気を付けよう」などと気にかけておくだけでも、点数は変わると思います。

先生が子どもたち・保護者に一番伝えたいこと

【Q】通知表を渡す際に先生が一番伝えたいことは何ですか?
(A)3段階評価だけでは表せない、お子さまの細かな成長です。

通知表で表せる評価は、「よくできた」などたった3段階です。
通知表を渡すと、子どもたちは「よくできた」が何個あるかなどに注目しがちですが、3段階の中にもグラデーションがあります。そのため「よくできた」に同じようにマルが付いていたとしても、Aさんの場合は「本当にすごい成長だ」ということがあります。手渡しし、言葉をかける場面は紙の上の評価だけでは表せない、その細かな成長をきちんと伝えたい場面です。

保護者のかたから質問が出た時もきちんと説明できるようにしています。「まだまだ伸びていける段階です」「この項目はたった1つのマルですが、実は断トツなんです」など。小学生の場合は、お子さまの成長に焦点を当てて通知表も見ていただければと思います。

通知表に対する保護者の心構えと子どもへの声かけ

通知表は、現時点のお子さまの学習や生活の状況が記されています。
大前提として、結果に一喜一憂するのではなく、まずはがんばって学期をしっかり終えられたことを褒めてあげてください。毎日学校に行って、授業を受けて、宿題に取り組んで、友達との関係も築き、時には習い事にも通う。これだけ考えても、小学生の毎日はとても忙しいことがわかるでしょう。大人だって、毎日の通勤をしんどく感じることはよくありますよね。「学校に行くのは当たり前。子どもの義務」ととらえるのでなく、しっかり通えたことをきちんとほめてあげましょう。

そのうえで、通知表の中身について声をかけていけるといいですね。ついつい、◎や◯の数を数えて、前回との比較をしてしまいがちですが、それはNG。比較ではなく、第一に今「できていること」に注目してください。今学期、お子さまがどのような部分で成長したのかを把握して「がんばったね」とほめてあげられるといいですね。

次に、お子さまがどんな努力をしてきたのかを見てあげましょう。どのようなことが評価されて良い成績になったのか、実はお子さま自身もあまりわかっていないかもしれません。お子さまに質問もしながら、「これをがんばってきたから、良い成績になったんだね」と、一つずつ気付かせてあげてください。

通知表から課題を見つけて今後の行動に生かさなければ……と思われるかたもいらっしゃるかもしれませんが、そこまで気負わなくても大丈夫です。通知表は「今学期、よくがんばったね」とたたえる賞状のようなものです。しっかりほめて、がんばりを認めてあげれば十分です。認められたお子さまは、おのずと次もがんばろうという気持ちになるはずです。

まとめ & 実践 TIPS

通知表は、現時点での学習や生活の様子を示し、学期のがんばりをたたえる賞状のようなもの。ついつい、マルの数を数えて課題を指摘してしまいがちですが、今できていることを認め、ほめてあげられるといいですね。「よくがんばったね」と声をかけてあげられれば、お子さまのやる気もおのずと高まるかもしれません。


出典:
小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)別紙一覧|文部科学省

プロフィール


庄子寛之

元公立小学校指導教諭。大学院にて臨床心理学について学び、道徳教育や人を動かす心理を専門とする。「先生の先生」として、ベネッセの最新データを使いながら教育委員会や学校向けに研修を行ったり、保護者や一般向けに子育て講演を行ったりしている。研修・講演は500回以上。講師として直接指導した教育関係者は1万5000人に及ぶ。全国の学校が休校していた2020年のコロナ禍に、これからの教育について考えるオンラインイベントを企画し、世界中の教育関係者を2000名以上集め、話題を呼ぶ。子ども教育のプロとして、NHK「おはよう日本」や朝日新聞、毎日新聞などのメディアなどにも取り上げられ、一躍有名になる。また、ラクロスの指導者としての顔も持ち、東京学芸大学女子ラクロス部監督、U-21女子日本代表監督、U-19女子日本代表監督を歴任。「教師」×「指導者」として、一貫して「自分で行動できる子ども・選手」の育成を実践している。著書に『自分で考えて学ぶ子に育つ声かけの正解』(ダイヤモンド社)など多数。

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