ビリギャルの著者が語る 自分で気づく「才能の正体」の方法とは?
子どもたちが持っている「才能の芽」を伸ばすために、保護者にできることはなんでしょうか。
『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話』(『ビリギャル』)や『才能の正体』の著者で塾講師・起業家の坪田信貴さんに、子どもたちが「自分で気づく」ことで成長を促す「中立的フィードバック」についてうかがいました。
「指導」されると「イラっとする」のは自然なこと
意外なようですが、一般に「指導」や「教育」というものは、しばしば相手の悪感情を引き起こす性質があります。
たとえば行きつけのスーパーの駐車場に、いつもの入り口から入ろうとしたところ、警備員さんに「今、この入り口は工事中なので、反対側に回ってください」と言われたとしたらどうでしょう。警備員さんはお客のために正しい「指導」をしているのですが、それでもちょっとイラっとするのではないでしょうか。
いつもどおりの行動を拒否されると、腹が立つのは自然なことです。指導や教育には、相手との信頼関係がないと、指導される側が「攻撃されている」と感じてしまう、という性質があるのです。
指導する側は「あなたのためを思って」指導しているために、感謝してほしいと思いがちです。しかし、指導される側は、自分の「したいこと」や「やり方」を拒否されたように感じてしまうもの。指導する側とされる側にはいつも大きなズレがあります。
鏡のように事実だけを伝える「中立的フィードバック」
一方、人間には、フィードバックを受けて自分の状態を知ると、自分でより良くなろうとする性質があります。
たとえば、鏡を見ているとき、顔にゴミがついていたら取りますし、寝癖がついていたら直したくなりますよね。人は鏡を見ているときは、自然に「自分のいちばんいい顔」をしているものです。ところが、鏡が感情を持っていて「今日の髪型、変だよ」「しわがふえたね」などと主観的な意見を言ったとしたら腹が立つのではないでしょうか。
では、子どもがテストで30点を取ってきたときはどのように言えばいいのでしょうか。「どうしてこんな点数なの?」「全然勉強してないじゃない!」などと感情を入れずに、単に「30点だったんだね」といえばいい。子どもの姿勢が悪くて前かがみなのが気になっていたら、「姿勢が悪い! 目が悪くなるよ!」などといわず「背中が曲がってるよ」とだけ伝えればいいのです。
鏡のように、客観的・中立的な事実だけを根気よくフィードバックしていくと、相手は自然により良くなろうとし、そのための方法を探し始めます。
子どもがゲームに夢中になるのは「中立的フィードバック」がすぐ返ってくるから
なお、つい“マイナスの感情”を入れてフィードバックしてしまいがちな人には、お医者さんの診断が参考になるかもしれません。
「扁桃腺が腫れていますね。このままだと熱が出る可能性があります。お薬を出しましょう」。これはまさに中立的フィードバックです。でも、「手洗い、うがいをちゃんとしてますか? してないからこんなことになるんですよ!」と言われたら腹が立ちますよね。
こうした中立的フィードバックがいかに効果があるかを、よくあらわしているのがゲームです。
多くの子どもたちがゲームに夢中になるのは、その場で中立的フィードバックがくるからだと思います。敵を倒せば「経験値が3上がった」「ゴールドが増えた」と出ますよね。それと同じことをしたらいいと思います。「今、問12だね。問20まで解くとレベルが1上がるよ」などと声をかけると、たいていの子は「やる」と言うものです。
教えたいことは「言葉」だけでは伝わらない
「言葉」というのは、認識にズレが生じやすいものです。
たとえば子どもがお母さんに「部屋を片付けておいて」と言われた。そこで、床に散らばった本を本棚に戻しておいたのに「全然片付いてないじゃない!」と怒られた……なんてことが、よくあります。ちゃんと本は片づけたのに、「脱いだ服くらい洗濯機の所に持っていって」「掃除機くらいかけなさい」「クローゼットの中はどうなの」と、どんどん別のことを要求される。これは、お母さんと子どもで「片付け」の指すものが違っているから起きたことです。お母さんが一緒に片付けて「この状態に戻してね」と伝える、あるいは自分の考える「完璧に片付いた状態」を写真に撮って子どもに見せれば、認識のズレは小さくなるはずです。
つまり、あいまいな言葉で指示をしても、相手の能力は上がりません。たとえば「靴を履く」という行為ひとつでも、靴を見る、靴の正面に行く、左右、足の向きにそろえて置く……など言葉にならない工程がたくさんあります。何かをきちんと教えたいと思ったら、やってほしいことを自分でやってみせる、一緒にやってみる、一人でやっているところを見守り、どこができていないかよく観察する……など時間をかけて、ていねいに取り組む必要があります。
何かが「できない」としても、それは子どもの能力が低いせいではない、ということを、指導者は肝に銘じておくことが大切です。
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