ビリギャルの著者が語る「努力し続ける力」を育む環境とは

子どもたちが持っている「才能の芽」を伸ばすために、保護者にできることはなんでしょうか。
『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話』(以下『ビリギャル』)や『才能の正体』の著者で塾講師・起業家の坪田信貴さんに、才能を花開かせるために必要な「努力し続ける力」についてうかがいました。

「言葉」ではなく「行動」をまねる「行動の完コピ」とは?

「言葉」による指示だけでは能力を伸ばすのは難しいものです。
たとえば柔道の達人に、試合に勝つための秘訣を聞いても、あまり役に立たないと思います。「できる」人は、自分がなぜそれができるのか言語化できないことがほとんどだからです。
「~できるようになりたい」と思ったら、それができる人、目標とする人の行動をよく観察してまねてみるのがいちばんです。

たとえば憧れのサッカー選手がいたら、フォームはもちろん、試合の展開に応じてどんなポジションにいるのか、チームメイトとどうコンタクトを取っているのか、試合の流れが止まった時は何をしているかなど、動画を撮って注意深く見てまねてみる。部活の先輩など身近な人であれば、練習には何時に来るのか、特に熱心に練習していること、逆に力を抜いていることは何か、休日の過ごし方など、丸ごと「完コピ」してみるとよいと思います。

行動を「完コピ」することより、できる人になるためにどんな努力や感性が必要か、身をもって知ることができますし、より自分に合ったやり方を編み出すことにもつながります。「まね」ではオリジナリティがつかないのでは? と思うかたもいらっしゃるかもしれませんが、完全にその人になりきることなど不可能で、オリジナリティはいやでも生まれてきますから、ご安心ください。

努力の継続をさえぎるもの、支えるもの

「才能がある」と言われている人たちに共通しているのは、自分に合った方法で「努力し続けている」ということです。どんなに素質があっても、努力の継続がなければ成果を出すことはできません。ところが、努力の継続に「邪魔が入る」こともよくあります。
たとえば歌が好きで楽しく練習しているのに「歌手になるなんて絶対無理」「そんなことはほどほどにして勉強しなさい」といわれる。あるいは、コンクールに一度チャレンジしたものの結果が出せなかったので「あきらめなさい」といわれる、といったことです。
努力を邪魔するのも、支えるのも、最も影響力が大きいのは家族です。結果が出ようと出まいと、心から信じて見守ってくれる人がいてこそ、人は果てしない努力を続けることができます。

「いつでも帰れる場所がある」からこそ頑張れる

人間の評価の仕方には、「doing、having、being」の3つがあります。
doingは行為に対する評価で「掃除してくれてありがとう」、とか「どうしてそんな危ないことするの!」といった言葉がこれにあたります。
havingはもっているものに対する評価で「成績がいい」「スポーツ万能」「地位がある」といったこと。beingは存在そのものに対する評価です。

子どもが小さい頃は、その子の存在そのものが大切で「生まれてきてくれてありがとう」という気持ちで接していたのに、小学校、中学校と進むにつれてdoingやhavingの評価が増えていく、という家庭は多いようです。幼いころは、今日は〇〇ちゃんと遊んで、こんなことしてね……という話を楽しみに聞いていたのに、「なぜもっと早く帰ってこないの」「定期テストが近いけど勉強してるの」などと、あらゆる行動をチェックしたくなったりする。
そうすると、たとえその言葉の裏側に愛情があっても、子どもは自分の存在そのものを受け入れられていないと感じ、「親は自分を理解してくれない」「どうせ自分は……」と思うようになってしまいがちです。これはまさに「才能をつぶす」ことにほかなりません。

僕は高校と大学で留学をさせてもらったのですが、日本を出る前に祖母に言われたこんな言葉が忘れられません。「逃げたくなったらいつでも帰ってきていいんだからね。志半ばで帰るなんてだめだと思うかもしれないけど、『志半ばだからこそ』帰ってきなさい」。僕はこの言葉のおかげで「自分にはいつでも帰れる場所がある」と思えたからこそ頑張れました。
「結果を出したから」「成績が良いから」いい子なのではなく、自分という存在そのものをまるごと認めてくれる人がいる。そのことが支えになり、努力し続ける基盤となるのです。

『ビリギャル』のさやかちゃんのお母さんに、「なぜそこまで子どもの底力を信じることができるんですか」と質問したことがあります。すると、「だって疑うほうが大変じゃないですか」とおっしゃいました。恋愛で相手の浮気を疑って疑心暗鬼になるのと同じで、疑いだしたらきりがない。
「だから私は信じるって決めたんです。そうしたらすごく楽ですよ」。
これは本当に名言だと思いました。

何年かけても実現したい! と思う夢があり、そこに向けて絶え間ない努力を続けられたら、結果に関わらず、それは「素晴らしい才能」だと思います。才能に不可欠な「努力」の継続を支えるのが、家族の信頼ではないでしょうか。

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幻冬舎/坪田 信貴 (著) 1,620円(税込)

プロフィール


坪田 信貴

坪田塾塾長。心理学を駆使した学習法により、これまでに1300人以上の子どもたちを「子別指導」し、偏差値を上げてきた。起業家としての顔を持ち、人材育成、マネージャー研修なども行う。テレビ、ラジオ、講演会で活躍中。著書に「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学現役合格した話」(KADOKAWA)など多数。最新刊は10月に発行された「『人に迷惑をかけるな』と言ってはいけない」(SBクリエイティブ)。

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