企業は採用で大学の成績重視を 経済同友会が通年採用を提言

経済同友会は、大学生の就職について卒業後5年までは「新卒扱い」とし、「新卒・既卒ワンプール採用」と「通年採用」を導入するよう求めた提言をまとめました。現行の一括採用の方式を残すと同時に、大学卒業後、留学やボランティアなどの多様な経験を積んだ既卒者を採用するための方式を、新たに打ち出しているのがポイントです。

  • ※「新卒・既卒ワンプール/通年採用」の定着に向けて
  • http://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2015/160328b.html

2017(平成29)年度入社に向けた大学生の就職活動は、3月に企業説明会が解禁されており、6月には採用選考(内々定)が開始される予定です。企業の人手不足感が強まるなかで「売り手市場」となるとの予測もありますが、まだまだ安心できません。

そもそも日本の多くの企業は「新卒一括採用」方式を取っているため、卒業前の景気動向に大きく左右されるという特徴があります。バブル経済崩壊後の「就職氷河期」、リーマンショック後の「超就職氷河期」などは、まさにその典型です。それもこれも、新卒一括採用という、たった一度の就職活動で人生が大きく変わってしまうこともある「ワンチャンス就活」に問題がある、と経済同友会は指摘しています。また、新卒一括採用では、大学の成績をきちんと評価する企業が少ないため、大学における人材育成が阻害されているとも批判しています。

このため経済同友会は、卒業後5年程度までを「新卒扱い」としたうえで、在学中にしっかり学んで、卒業後にボランティア、海外留学、資格取得など2年間程度の多様な経験を積んだ既卒者を「通年採用」(年2~4回採用、入社時期は春・秋2回)することを提言しました。採用選考に当たっては、「大学4年間の成績」と「卒業後の活動成果」を評価することで、企業と就職希望者の「ミスマッチ」を防止することもできるとしています。中途採用ではなく、あくまで新卒採用として通年採用を位置付けているのが特徴といえるでしょう。

ただし、卒業後すぐに就職しなければ経済的に厳しいという学生や、一定の企業のニーズなども考慮して、卒業後に切れ目なく就職できるよう、現行の新卒一括採用の「枠組み」も存続させるとしています。しかし、この場合でも、採用対象には卒業後5年程度までの既卒者を含めるよう求めています。

大学卒業後に就職活動をするのが当たり前になってくると、大学や企業の対応も、変化を求められてきます。経済同友会は、大学に対して、学生がどのようなカリキュラムに基づく教育を受け、その結果、どう成長したのかについて、「わかりやすく客観的に明示する必要がある」と要望。企業に対しては、求める人材像を明確にしたうえで、必要な能力を「語学力、資格、成績水準、インターンシップ経験等、応募条件として明記」する必要があるとしています。

欧米と同様に新卒と既卒の区別がなくなれば、新卒者の就職はより厳しくなる、という見方もある一方で、日本の新卒一括採用という仕組みを批判する声も少なくありません。ただ現在の大学生の就職活動は、根本的に見直す必要があることだけは間違いないといえるでしょう。

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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