奨学金返還、手続きなど人任せの者は延滞が多い

子どもの教育費負担が家計を圧迫するなか、大学進学などで奨学金に頼る家庭は少なくないと思います。日本の奨学制度の中心を占める日本学生支援機構(旧日本育英会)の奨学金は貸与制であるため、大学卒業後には返還しなければなりませんが、奨学金返還の延滞者の増加が問題となっています。同機構の調査で、延滞者には二つの大きな課題があることがわかりました。

奨学金の延滞者に関する属性調査」によると、2013(平成25)年末現在で同機構の奨学金返還義務者は約342万4,000人、うち約18万7,000人(5.5%)が3か月以上返還を延滞しています。明らかになった課題の一つは、本人の当事者意識の低さです。奨学金申請の書類を作成したのは、「本人」が無延滞者51.4%に対して、延滞者は32.7%にとどまっています。逆に「親」が作成したのは、無延滞者20.9%に対して、延滞者は37.1%でした。また、奨学金に返還義務があることを知った時期は、「手続き前」が無延滞者は92.5%、延滞者は56.1%となっています。
このほか、実際に奨学金を返還している主な者は、「本人」が無延滞者84.1%に対して延滞者は65.1%、「父母」が無延滞者13.0%に対して延滞者は30.8%などとなっています。

無延滞者は、5割以上が自分で申請書類を作成し、ほとんどが申請前に奨学金の返還義務を知っていたのに比べ、延滞者は書類作成を保護者などに任せたり、返還義務の存在を知らないで奨学金を申請したりした者の割合が高いことが目立ちます。また、延滞者には返還を保護者に任せている者が多いことも特徴です。自分が奨学金を借りたという、当事者意識が低い者が少なくないようです。奨学金を保護者による教育費の一部と受け止め、保護者が対応するものという意識が、延滞者の一部にはあるのかもしれません。

二つ目の課題は、返したくても返せないという深刻な問題です。本人の職業を見ると、「常勤社員」は無延滞者67.9%・延滞者36.2%、「非常勤社員」が無延滞者7.4%・延滞者14.7%、「派遣社員」が無延滞者2.9%・延滞者6.6%などとなっています。また「本人の年収」を見ると、無延滞者は「200万~300万円未満」が25.6%と最も多いのに対して、延滞者は「100万~200万円未満」が24.0%と最も多く、延滞者の58.4%が年収200万円未満となっています。なお、失業や病気などで経済的に返還が困難な場合、同機構は返還猶予制度を設けていますが、同制度を知っていたのは延滞者の46.4%にすぎませんでした。

借りた奨学金は返すのは当然ですが、不透明な時代には何が起きるか予想もできません。そもそも「日本の奨学金は、実質的な教育ローンだ」という批判もあり、債務を背負うことを恐れて奨学金を借りない者も多い、という指摘もあります。家庭の経済格差が教育格差につながらないよう、奨学金を借りやすくする柔軟な返還制度とともに、返還の必要のない給付型奨学金の創設が強く求められます。


プロフィール

斎藤剛史

斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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