学校での地震、天井・窓枠・照明などに要注意‐斎藤剛史‐

東日本大震災を契機にして学校の施設の耐震化が進んでいます。しかし、建物などの耐震化だけでは不十分なことが文部科学省の協力者会議の報告書で明らかになりました。報告書は、天井・窓・外壁・照明器具など「非構造部材」について、教育委員会など学校設置者に「責任をもって点検する必要がある」と求めるとともに、緊急に対策を講じるべき部分を例示しています。学校に潜む危険は、どんな場所にあるのでしょうか。

文科省の調査によると、東日本大震災では公立学校の体育館において、天井の脱落や破損が152件、照明器具の脱落や破損が194件、窓ガラスの脱落や破損が220件、外壁の脱落やひび割れが379件などの非構造部材の被害がありました。文科省が問題視しているのは、窓枠ごと落下するなど深刻な事件につながるケースがあったうえに、耐震化済みの建物での被害が少なからず発生したことです。このため文科省は2013(平成25)年8月、致命的被害となりやすい体育館などの「つり天井」については、原則撤去という方針を打ち出しました。今回の協力者会議の報告は、それ以外の非構造部材について主に検討したものです。

協力者会議は、危険性が高く優先的な対策が必要な非構造部材(家具等を含む)を明確化する必要があるとして、次のようものを例示しています。

▽音楽室など校舎の中の大規模なつり天井のうち脱落防止対策がなされていないもの
▽体育館などの「はめ殺し窓」
▽上部に設置された窓が外に張り出す「片持ち構造」となっている体育館の横連窓
▽地震に弱い素材の外壁で劣化したもの

これらは地震の際、脱落したり破損したりする可能性が高く、協力者会議は教委など学校設置者が責任をもって専門的な点検を実施するよう求めたほか、経年劣化などに備えて日常的に点検することとしています。特別教室などのつり天井の下、大きな「はめ殺しの窓」の下、体育館でよく見かける壁の端から端まで続いている横連窓の周囲などは、地震の際の危険地帯といえます。

また耐震化対策の見直しのため、「照明器具の脱落防止対策」、竜巻なども想定した「窓・ガラスの飛散防止対策」、「外壁(外装材)の脱落防止対策」、普通教室などの間仕切り用コンクリートブロック壁など「内壁(内装材)の崩落防止対策」、体育館のバスケットゴールや校舎内の給湯設備など「設備機器の転倒落下防止対策」、ロッカーやテレビなど「家具等の転倒落下防止対策」などを検討するとしています。これらの周囲も災害の際には要注意です。

このほか協力者会議は、非構造部材の耐震対策などと同時に、「各学校において児童生徒等がそれらの被害から身を守る行動を取れるように訓練することが、より人身被害の軽減につながる」として、日頃から落下や転倒などを想定した訓練をしておくなど、自ら危険を回避できる力を子どもたちに身に付けさせる必要があると指摘しています。どんな場所が危険なのか、保護者も子どもたちと話し合っておくとよいかもしれません。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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