食物アレルギー把握で生活指導表の提出を 文科省が通知‐斎藤剛史‐

文部科学省は、学校給食などでの食物アレルギーによる事故を防止するため、学校での対応を必要とする子どもについて、医師の診断に基づく申告書である「学校生活管理指導表」(外部のPDFにリンク)の提出を保護者に実質的に義務づけるよう、全国の都道府県教育委員会などに通知しました。入学前に学校や給食調理場などの現状を理解してもらうことや、保護者から十分な情報提供を求めることなども盛り込み、学校と保護者の連携の必要性を強調しています。

2012(平成24)年12月に東京都調布市立小学校で学校給食を食べた女児が急性アレルギー反応で死亡した事件を契機に、文科省は食物アレルギー対応に関する協力者会議を設置しました。文科省の調査によると小学校から高校までの公立学校において食物アレルギーがある子どもは45万3,962人おり、児童生徒全体の4.5%となっています。しかし、このうち医師の診断書などが提出された者は21.4%に過ぎません。これに対して同協力者会議は報告書の中で「食物アレルギーであるにも関わらず、医師の診療を受けていないケースや、逆に実際には食物アレルギーでないケースに対しても給食対応をしている例も含まれていると考えられる」としたうえで、「保護者からの申出のみを対応の根拠とすることは、安全管理の観点から、非常に大きな問題がある」と指摘しました。

これを受けて文科省は、「学校での管理を求めるアレルギーの児童生徒」に対しては、「学校生活管理指導表の提出を必須にするという前提のもと」で対策を取るよう通知しました。「学校生活管理指導表」は、医師の診断をもとに子どもの疾患の状態と配慮が必要な事項などを記載するものです。その提出を必須とすることは、食物アレルギーの子どもを持つ保護者に医師の診断を実質的に義務付けることを意味します。各学校は「学校生活管理指導表」をもとに校内委員会を設置して、子どもごとに個別対応プランの作成、支援の重点化などを行うことになります。
学校給食では、献立作成から配膳までの各段階における複数の目によるチェック機能の強化、食材の原材料の表示、誰が見ても内容がわかりやすい献立表の作成などに努めるほか、アレルギー事故に備えて教職員全員がアレルギー症状緩和の自己注射薬「エピペン®」を取り扱えるよう研修しておく必要があるとしています。

食物アレルギーに対する医師の診断の義務付けは、保護者にとって経済的・時間的な負担があるほか、プライバシーなどの観点から一部で反発の声が出ることも予想されそうです。しかし、子どもを守るためには学校と保護者の連携が何より重要です。このため文科省は通知の中で、入学前に保護者に学校の現状や給食施設の実態などを理解してもらうこと、さらに専門の医療機関に関する情報やアレルギー対応の資料の紹介などのケアを学校が保護者に行うことも求めています。正確な医師の診断は、保護者と学校の連携のスタートラインと考えることも必要でしょう。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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