「幼児期運動指針」ポイントは「毎日、合計60分以上の運動」
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文部科学省は「毎日、合計60分以上、楽しく体を動かす」をキャッチフレーズにした「幼児期運動指針」を策定した。教育ジャーナリストの斎藤剛史氏が、この指針について解説する。
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運動・スポーツというのは複雑な体の動きを合理的にコントロールすることで成果が上がります。運動が苦手な子どもは、筋力が弱い、反射神経が鈍いというよりも、自分の体の動かし方をよく知らないのです。
一般的に、子どもが体の動かし方を覚えるのは幼児期だと言われています。しかし少子化や都市化によって集団で遊ぶ機会が減少し、家庭でもお手伝いなどで体を動かす経験が減るに従い、体の動かし方を十分に会得できない子どもが増えてきました。最近の子どもの運動能力の低下は、筋力の低下よりも、体の動かし方を十分に身につけていないことが原因の一つであると指摘するスポーツ学の専門家もいます。
このため文科省は3~6歳児を対象にした運動指針を策定し、子どもの発達段階に応じてどのような運動をさせ、どんな能力を身につけさせればよいのかという目安を、幼児教育関係者や保護者に向けて示すことにしたのです。
指針では基本的な体の動きを、立つ・転がるなど「体のバランスをとる動き」、走る・跳ぶなど「体を移動する動き」、持つ・運ぶなど「用具などを操作する動き」の3つに分け、3・4歳で「体のバランスをとる動き」と「体を移動する動き」を身につけさせ、4・5歳でさらに「用具などを操作する動き」を加え、5・6歳でこれら3つの動きを洗練化する……という流れを示し、その具体的な方法をガイドブックで例示しています。
同指針のポイントは、特定のスポーツや強制的指導ではなく、遊びを通して子どもが楽しく自発的に体を動かすことを重視していること、そして、幼稚園・保育所や家庭などで「毎日、合計60分以上」体を動かすという目安を示していることです。また、体を動かし子ども同士で遊ぶことは、コミュニケーション能力の育成にもつながる重要なことであると強調しています。
子ども同士で体を動かしながら遊ぶことの重要性を、大人たちはもう少し理解すべきかもしれません。