「なぜ、できないの?」と言っていませんか?[やる気を引き出すコーチング]

「宿題やったの?」
「まだ……」
「なぜ、やらないの? 早くやってしまいなさい!」
「後でやる……」
「なんで、いつもさっさとできないのよ?」
言っていませんか?こんな言葉。気が付いたら、口から出てしまいます。これで、果たして子どもはやる気になれるでしょうか?
「わかってはいるけれど、つい言ってしまう。言わずにはいられない。なぜ、いつも私は上手に言えないんだろう?」
ほら、自分にも、日頃からこの質問を投げかけていませんか? やる気になれますか? やめませんか、この質問。

なぜ、できないの?」と言っていませんか?[やる気を引き出すコーチング]


未来に向かって肯定的に質問する

「なぜ、できないの?」という質問は、質問の形をしていますが、相手を責めるニュアンスに満ち満ちています。質問する側も理由を聞きたいというよりは、どちらかというと相手を叱るモードです。この「なぜ」を伴った「否定質問」をされて、前向きになれる人はあまりいません。

「どうすれば、勉強を始められるかな?」
「え? ……やる気になったら」
「うん。どうすればやる気になれる?」
「……うーん、今はムリ」
と、いきなり玉砕することもあるのですが、どうでしょう?
「なぜ、できないの?」
と聞かれるのと比べて
「どうすればできる?」
と聞かれると、思考の向かう先が変わる気がしませんか。

たとえ玉砕しても、引き続き、コーチは可能なことを聞いていきます。
「いつだったら、やる気になれそう?」
「何があったら、やる気になれるかな?」
「何から始めると、やる気になれる?」

未来に向かって肯定的に質問をしていく。これがコーチングの特徴です。すぐに答えが返ってこなくても大丈夫です。質問を投げかけておくことによって、子どもの中で、その問いはちゃんと残っていきます。今まで、「こうしなさい。ああしなさい」と言われるばかりで考える余地を与えられなかった子どもほど、考えることに慣れていませんから、なかなか答えられません。大切なことは、答えが返ってくることではなく、未来に向かって肯定的に子どもたちが考えられるよう習慣付けること。そして、最も大切なことは、「この子は、ちゃんとやれるんだ」というところに立って、こちらが問いかけ続けていくことです。

できない原因はちょっと脇におく

就職カウンセリングの現場でも、失敗して落ち込んだり、やる気になれなかったりする生徒が、急に前向きになって具体的な行動について語り出すことがあります。それはどんな時かというと、「肯定質問」+「未来質問」を使って対話をした時です。

  • 「そっか、思ったように面接試験で話せなかったんだね。(いったん受けとめる)
  • 次は、どうすればうまく話せると思う?(肯定質問+未来質問)」

「なぜ、うまく話せなかったの?」と質問するよりも、子どもたちの視点が前に向かいやすくなります。

ところが、意外と私たちは、「否定質問+過去質問」で子どもたちに質問していませんか?
たとえば、
  • 「なぜ、できなかったの?」
  • 「どうして、やらなかったの?」
こんな感じです。残念ながら、相手を追いつめるか言い訳しか引き出せません。
仮に「できない理由」がわかったところで、できるための方策や意欲が引き出されるかというと決してそうではないのです。原因を究明して、解決策を考えることは大切です。しかし、原因にばかり焦点をあてていると、よけいに動けなくなってしまう場合もあります。「今、できること」を考えて、まずやってみる。それで、解決することもあるのです。
「どうすればできるの?」は「できる」という立ち位置に立っているからこそ、発せられる質問です。「できる」というところに立つことで初めて、可能な方法が見えてくるのです。ですから、どうぞ、自分自身にも「なぜ、できないの?」ではなく、「どうすればできるの?」と日頃から問いかけるようにしてみてください。

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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