「地球規模で考えて、足元から行動しよう」[エココラム]

お気に入りに登録

ポップアップを閉じる

アプリなら
会員登録不要
記事を保存できます

アプリで続けるお気に入り 一覧ですぐ見返せる!
ここの問題に限らず、日本で生活していると信じられないようなことが、各地で起きているのだと思う。
もし仮に、私が国内の山だけを登り、ヒマラヤ登山をしていなければ、ダワ・ドマさんの話を聞くことはできなかった。いや、そればかりかイムジャ氷河湖の問題を知ることもなかったかもしれない。
しかし今、この瞬間も、私たちの知らない世界では、深刻な問題が確実に進行している。
そして、その原因は、私たち先進国の暮らしに起因している場合がほとんどだ。
たとえば、途上国では単一の作物を先進国への輸出作物として作っている場所が多い。これは、その土地の自然の多様性を壊しているだけではない。子どもたちが栄養不足であっても、農地では自分たちの口に届かない作物を育てるという悪環境に陥っていることもある。にもかかわらず先進国の生活者は、その食品を「賞味期限切れ」で捨てることさえある。
また先進国が消費する家具や木材、パルプ原料のために世界の森林の多くは破壊されている。
そして九州と四国を合わせた面積の土地が、毎年、砂漠化している。
さらに、温暖化による海面上昇で深刻な影響を主に受けるのは、温暖化の原因とは関係のない途上国の人達だ。

では先進国の市民は、国際的な環境問題に対しどんなアクションを起こせばいいのだろうか。
環境問題に取り組むNPO(民間非営利団体)のイベントに参加することも、できることのひとつだ。私も昨年は「富士山・エベレスト同時清掃」など多くのイベントを行った。多くの方々のご支援、ご協力のおかげで、効率的かつ広範囲にゴミを回収することができた。
しかし、このような組織のイベントに参加するよりも大切なことは、環境のことを頭に入れて日常生活を過ごすことだろう。
先進国の生活は、国際的な環境問題や発展途上国の人々の暮らしと密接に結びついている。
ならば、日々の生活を変えていくことで、世界は変えられる。大げさではなく、私はそう思っている。
「Think Globally, Act Locally」という言葉がある。1970年代以降、アメリカの市民運動でよく使われてきたのだが「地球規模で考えて、足元から行動しよう」という意味だ。
まずは今、世界で何が起きているのかを家族で話し合ってみよう。そして、自分たちの暮らしを見つめなおし、日常生活でできることを実践していこう。小さな取り組みでも、毎日続け、環境意識をまわりに広げていくことで、それは輪となり、世界を変えていく力になると思う。
僕も環境問題が起こっている現場で直接的な行動をするのと同時に、日常生活でできることを、引き続き提言していければと思う。

プロフィール



アルピニスト。1999年エベレストの登頂に成功、7大陸の最高峰世界最年少登頂記録を25歳で樹立。「富士山から日本を変える」をスローガンに、日本各地の環境保全活動を展開、小学生から大学生までを対象に「野口健 環境学校」の校長を務めている。

子育て・教育Q&A